高橋
高橋は警視に昇格した。ノンキャリアの彼が若くしてこの地位につく事は異例であり、間違い無く武の差し金だった。
しかし彼は気が気でなかった。今日は水玉男が妻子を解放すると約束した日なのだ。
帰宅すると、生きた心地もせずソファーに座り込み、じっと待った。
チャイムの鳴る音がした。
びくりと動き走って玄関へ向かうと、そこにいたのは宅急便の配達員だった。
落胆しながらも判を押し荷物を受け取ったが、かなり重たい。
差出人の欄には「佐藤たかし」という見知らぬ名があった。
不審に思いそっと蓋を開けると、そこにはマトリョーシカ人形のように発泡スチロールの箱がある。
蓋を開けて絶句した。
中にはすっかり冷たくなった、彼の妻子が横たわっていた。
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