高橋

武の邸宅を出た高橋は、電車に乗り自宅の最寄り駅で降り、通りを一人歩いた。


人気の無い場所に入ると、電話をかけた。


「言われた通りにした。」


「上手くいったか?」


「ああ。田中はすっかり信じて、奴を肉食泥鰌の餌にしたよ。」


「そりゃ羨ましい、是非見てみたかった。

で、あれの方も上手く置いてきたか?」


「ああ、気付かれず上手くやれた。それで…二人は無事なんだろうな?返してくれるんだよな?」


「当たり前だ。ただ、今すぐは無理だ。」


「おい!約束が違うぞ!全て上手くやったら、妻子は無事解放するって…」



「落ち着けよ、二人は無事だ。返す気もある。ただな、俺一人で今すぐ二人も解放するのはリスクが高過ぎるんだ。

明日、必ずお宅に帰らせるよ。本当だ。」


明日、という期限を付けた事で高橋は少し安心した。


あの日、高橋が拉致され武に電話をかけさせられた後、水玉男はどこかへ出掛けた。

しばらくして、高橋の二歳の子供を連れて帰って来、次に妻を拉致して戻った。

二人を無事解放させたければ言いなりになるよう、脅迫されていたのだ。


そして水玉男は高橋にアイマスクを付けさせ、腕には手錠をかけて車に乗せ、自宅の最寄り駅で解放した。



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