第305話 郵便物のお土産

専業主婦で、ずっと家に閉じこもっていた妻に最近趣味ができたらしい。

その趣味というのは写真を撮ることのようで、色々な場所に出かけて行っては、写真を撮っている。

 

時々、帰って来るのが遅いが、今まで無趣味で家に閉じこもっていることを考えれば、このくらいは許容だろう。

今は妻の趣味を邪魔したくない。

俺は俺で一人晩酌をしていよう。

 

さらに妻に趣味が出来たことで、妻が活き活きとして若返った感じがする。

これも嬉しい限りだ。

妻を見て、ドキドキするなんて、10年ぶりくらいだろうか。

 

そんなある日の休日。

妻は海を撮りに行くと言って、出かけて行った。

 

俺は前の日の酒の二日酔いで、ずっと家で寝ていた。

昼過ぎに起きると、妻はテーブルに俺へのお昼ご飯を作って置いておいてくれていた。

 

ありがたいと思い、早速食べることにする。

 

すると妻から電話がかかって来る。

 

「今、お土産を送ったから、受け取って欲しいの」

 

とのことだ。

今日は一日家にいるつもりだったから、俺は快く了承した。

 

家でゴロゴロとしていると、チャイムが鳴る。

出てみると、妻が言っていたように郵便物だった。

 

あて先は妻へで、送り元は隣の県で、見たことのない名前だった。

 

お土産のはずなのに、おかしいなと思いながらとりあえず受け取った。

中には時計が入っているらしい。

 

変なお土産だなと思いつつ、俺はリビングのテーブルの上に置き、テレビを見ながら再びゴロゴロとしていた。

そして、18時になったときだった。

 

カチという音がしたと思うと、俺は眩しい光に包まれた。

 

終わり。












■解説

語り部の言うようにお土産を自分の家に送る場合には、送り主を自分にするはずである。

(嘘をつく意味はないため)

また、お土産に時計を選んだのであるなら、生ものでないため普通なら、自分で持って帰るだろう。

それをわざわざ郵便で家に送るのはおかしい。

また、語り部の妻が活き活きとして若返ったということと、色々と出かけるようになったこと、そして、語り部は妻に対して、あまり興味がなさそうなところを考えると、妻は不倫している可能性が高い。

つまり、送り付けられたものは爆弾で、語り部を殺すために「受け取って欲しい」と電話を掛けている。

そして、捜査をかく乱するために、送り主を偽名を使い、あて先を妻の名前にしている。

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