第159話 バラバラ死体

公園のごみ箱から切断された男性の右手が見つかった。

 

それは一週間ほど前から行方不明になっている、26歳の会社員のものだった。

俺たち警察は行方不明になった前後の、被害者の足取りを調べ上げた。

 

地道な聞き込みと、防犯カメラ、ドライブレコーダーなどありとあらゆるものを駆使して、被害者の行動を把握した。

 

すると見えてきたのが、Aという女性だった。

そして、俺たちは、今度はAという人物を調べ上げた。

 

特に被害者との接点はない。

おそらく、被害者を拉致する際に話したのが初だろう。

 

Aは、被害者が会社から帰る際の人気のない道で、声を掛け、スタンガンを使って気絶させて自宅まで連れ込んだ。

そして金品を奪い、バラバラにして色々な場所に死体を遺棄したのだろう。

 

偶然通りかかったタクシーのドライブレコーダーの隅に、男を抱えて路地裏へいく女性の姿が写っていたこともあり、俺たちはAの逮捕に漕ぎつけた。

 

最初は容疑を否認していたAだが、根気よく取り調べをしていく中でぽつぽつと自供を始めた。

 

Aと被害者の男は、実は初対面ではなく、駅で人ごみにぶつかって転んだところを助けてくれたのだという。

そこから思いを寄せるようになり、ストーカーまがいのことをしていたようだ。

 

しかし、被害者の男には恋人がいることがわかり、別れてもらうように説得するためにスタンガンで気絶させて自宅に連れ込んだのだという。

 

当然、俺たちには理解できない考え方だったが、それでも根気よく話を聞き出す。

 

被害者の男は恐怖し、恋人と別れてAと付き合うどころか、Aを罵ったのようだ。

そのことでAは頭に血が上って殺してしまったらしい。

 

そして、俺たちは今度は、バラバラにした死体をどこに破棄したかを聞き出す。

 

最初はもう忘れたと言い出し、頭を抱えたが、ここも根気の勝負だ。

左足を契機に、徐々に遺棄した場所を自白していくA。

 

左手と上半身を山奥に、右手と下半身を海に、右足と頭を川に遺棄したと自白した。

その供述の場所を警察官たちが捜索していく。

そして、Aが供述通りの場所でそれぞれ遺棄されていた遺体が見つかった。

 

これで五体すべてが揃った。

俺たちができることはここまでだ。

あとは検察の仕事になる。

 

事件も解決し、今日は久しぶりにゆっくり眠れそうだ。

 

終わり。













■解説

最初のごみ箱と海で「右手」が2つ、見つかっていることになる。

つまりAは少なくても、もう一人殺している可能性が高い。

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