第158話 未開の地に潜む部族

探検家の友人が行方不明になった。


 


探検家と言っても本格的じゃなくて、旅行好きに近い感じなんだけど。


有名な観光地じゃなく、秘境と言われるような変わったところに行くことが多い。


 


周りからは何度も危ないからやめた方がいいと言われていたのに、本人は大丈夫と言って聞かなかった。


けど、今回はその心配が的中で、5日前から連絡が取れなくなっている。


 


友人の母親に頼まれ、現地に飛んだ。


旅費と謝礼を貰っているから、ある意味旅行気分だ。


 


友人が行っていたのはジャングルの奥地。


きっとスマホの充電が切れたんだろう。


さっさと合流して、友人と遊ぶことばかり考えていた。


 


だけど、そんな能天気な気分は、現地の人たちに話を聞いて一気に吹っ飛んだ。


友人が入っていったジャングルは危険な部族が住むところらしい。


その部族はとても危険で、その部族に会った人間は誰も帰ってきていないのだという。


 


ただ、友人は楽天的だが危険が好きというわけではない。


その話は聞いているはずだから、その部族が出そうな奥地までには行ってないと思う。


となると、道に迷ったか怪我をして動けなくなっているのかもしれない。


 


すぐにジャングルに入って、友人を探す。


現地の人たちの言う通り、部族が出るところを避けて進む。


きっと、友人もそのあたりを進んでいるはずだ。


 


もし、そのあたりにいなかったら、友人には悪いが戻ることにする。


自分の命が一番だ。


さすがに友人の母親もそれはわかってくれるだろう。


 


このとき、完全に自分に危険が及ぶなんてことは考えていなかった。


危険なんて起こるわけがないと高をくくっていた。


だけど、それはあっさりと破られてしまう。


 


なんと、ジャングルの中で罠にかかり、見たことのないような変な格好をした人たちに捕まってしまったのだ。


おそらく、現地の人たちが言っていた部族だろう。


 


もう、生きては帰れない。


そう覚悟した。


せめて苦しまない方法で殺してくれと心の中で祈った。


 


だが、そんな祈りとは裏腹に、部族たちのもてなしに困惑した。


 


その夜は何かお祭りのようなものが開かれ、まるで自分を歓迎してくれているようだった。


なにより驚いたのが、部族の中で英語を話せる人がいたことだった。


あっちも自分も片言だったが、なんとか意思疎通はできた。


 


話に聞いていたような部族ではなかった。


みんな親し気で笑顔を向けてくれる。


 


今回のお祭りも神に捧げる儀式のようなお祭りで、いつも来訪者が来たら盛大に行われているらしい。


祭りと言えばお肉と思ったが、出てきたのは意外にもフルーツばかりだった。


それがビックリするくらい美味しい。


見たことのないようなフルーツだったが、パイナップルに似たような味だったが、断然こっちの方が美味しい。


普通に輸入して売り出せば、人気が出そうだ。


 


そして、その他には野菜も多かった。


野菜サラダのような感じで、肉が一切入っていない。


これもすごく美味しくて、肉がなかったのに大満足の食事だった。


 


部族の人たちも同じものを食べていた。


この部族は草食なんだろうか?


 


祭りの後はなんとお風呂に入れてもらった。


こんなところでお風呂にはいれるなんて思ってなかった。


しかも、お風呂のお湯は炭酸水みたいな感じで、入るとシュワシュワとして気持ちよかった。


リラックスができ、体がほぐれていく感覚がした。


 


お風呂から上がると、今度はマッサージを受けた。


凝り固まった体がほぐされていく。


普通ならこんなのはかなりのお金がかかるだろうってくらい、丁寧にマッサージしてくれた。


 


そんな日が3日続いた。


部族の人たちにそろそろ帰りたいと話すと、笑顔でわかったと了承してくれた。


そして、念のため、部族の人に友人のことを聞いた。


 


スマホで写真を見せると、なんと友人はここに来ていたのだという。


 


良かった。


これで友人を探す手間が省けた。


考えてみるとある意味、友人のおかげでいい思いが出来た。


友人には感謝しかない。


 


友人に会いたいというと、明日の朝、会わせてくれるらしい。


その夜、友人と合流した後、どこで遊ぶかを考えながら眠りについた。


終わり。














■解説

友人がその部族の村にいるなら、なぜ3日間会えなかったのか。


そして、なぜ、次の日の朝なのか?


 


また、語り部が部族にもてなされた内容は、全て「肉を柔らかくする」ものである。


つまり、この部族は食人をするということ。


友人は既に食われていて、語り部は次の日の朝に食べられるということ。


部族の人は「あの世」で友人に会わせるということである。


 


さらに、現地の人たちは食人の部族に悩まされ、外からやってきた人間をわざとこの部族に捕まるように、安全な場所と偽って教えている可能性がある。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る