第157話 復活祭

小さな村にある教会。

その教会の神父は村の人たちの信仰心が著しく下がって来ていることに心を痛めていた。

 

祈りを捧げるために教会に訪れる人もほとんどいなくなり、教会へのお布施もかつての10分の1になっていた。

教会の運営を手伝っている人たちも、これ以上、ボランティアで手伝うのは難しいと言い始める始末。

 

このままでは教会を維持することもできない。

神父と教会の運営者たちは頭を抱えた。

 

そんなある日。

神父は思い詰めてしまい、首を吊ってしまった。

 

神父が死んだというニュースは瞬く間に村中に伝わったが、そのほとんどの人は興味を持たなかった。

村の人たちはこれで教会も閉鎖され、潰れるだろうと思っていた。

 

しかし、その数か月後のイースター。

つまりは復活祭の日に奇跡が起こった。

 

なんと死んだはずの神父が復活したというのである。

 

その話を聞いた村人たちは教会に殺到する。

するとそこには生前と変わらぬ神父の姿があった。

 

そんな奇跡を目の当たりにし、呆然とする村人たちの前で神父は説法をした。

そのことで、村人たちの信仰心も高まっていった。

 

そして次の日。

教会は神父の亡骸を公開した。

復活祭が終わり、神父は再び、天に帰ってしまったのだと。

 

教会はさらに神父の亡骸をミイラにし、聖遺物として教会に安置した。

それからというもの、村の人々たちはもちろん、噂を聞きつけ、他の町からも神父を見に来る者たちが相次いだ。

 

教会を運営する者たちはこれで教会が潰れることはないだろうと喜び、神父のミイラに手を合わせて祈った。

 

終わり。














■解説

最初に神父が首を吊った際、『死んだ』とは書かれていない。

また、村人は『噂』を聞いただけで、誰も神父の遺体を見ていないことになる。

つまり、神父は首を吊ったが死んでいなかった。

そして、数か月間身を潜め、復活祭に復活したと見せかけたのである。

(教会の運営が行き詰まった際に、この計画を思いつき、実行した)

その次の日に、教会を運営する者たちに神父は殺され、遺体をさらされたというわけである。

もともと、教会を運営は「ボランティアで働くのは嫌だ」と言っているところから信心深くない。

つまり、金を儲けるために神父を殺害し、聖遺物をでっち上げたというわけである。

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