第152話 呪いの日記

私は昔から日記をつけている。

 

小学校に入学するときにお母さんからプレゼントされたものだ。

毎日数行の日記をつけるところから始めて、日記帳がいっぱいになったら新しい日記帳を買う。

それの繰り返しをして、もう10年が経った。

 

その日あった出来事を日記に書くのが日課になっていた。

 

高校に入学した頃から、私は苛められるようになった。

最初は悪戯じみたことから、徐々にエスカレートし、危害を加えられるようになるまでさほど時間はかからなかった。

 

私を苛めていたのは主にYだ。

その頃の日記にはYへの恨みがばかりが書かれている。

 

私は精神的に病んでしまい、登校拒否になった。

寝て起きて、ご飯を食べて、日記を書く。

そんな毎日の繰り返し。

 

だけど、そんな私に転機が訪れた。

なんと、Yが階段から落ち、大けがをしたというのだ。

Yは顔に大けがを負い、それを理由に学校に来なくなった。

 

それからというもの、私は苛めから解放され、また学校に通えるようになったのだ。

 

Yがいなくなってからの高校生活は楽しかった。

今までの反動と言っては変かもしれないけど、勉強も楽しく感じ、成績もグングン上がって、諦めていた大学にも入ることができた。

 

大学に入った私は初めての恋をした。

彼氏ができ、大学のキャンパスライフも充実していた。

 

……だけど、それも長くは続かなかった。

彼氏は二股をしていて、私とは遊びだったのだ。

 

私は彼氏に捨てられ、どん底まで落ち込んだ。

この頃の日記も、やっぱり彼氏への恨み言ばかりになっている。

 

そんなとき、その彼は自動車事故で死んだ。

こんなことを言うのは不謹慎かもしれないけど、ざまあみろと思った。

 

そして、大学を卒業後、就職をした。

就職先では嫌な上司がいて、色々と苛められた。

 

私はすぐに日記帳に恨み言を書いた。

この頃から私はなんとなく、この日記帳に恨み言を書けば相手に不幸が訪れるのではないかと思うようになった。

 

そして、その考えが合っていることが証明された。

 

その嫌な上司は何者かにナイフで刺され、重体になったのだ。

 

それからというもの、私は嫌なことがあればすぐに日記に書くようになった。

そのたびに、日記に書いた相手に不幸が訪れる。

 

スカッとした日々が続く。

 

だが、残念ながら私は縁に恵まれることなく、独身のまま60歳を迎えた。

仕事を辞め、両親の介護をする毎日になった。

 

私は介護に自分の時間が取られることに苛立ちを覚えるようになった。

そして、久しぶりに私は日記帳に母への恨み言を書いた。

 

すると次の日、母は自殺した。

 

それを見て、私は完全に吹っ切れた。

父にも死んでもらい、私はもう一度自分の人生を歩もうと考えた。

 

その日、私は日記帳に父への恨み言を書いた。

 

あれから5年が経つが、父はまだ何事もなく生きている。

 

終わり。














■解説

日記帳に書いた人物が不幸になっていたのは、日記帳を買い与えた母が実行犯だった。

なので母は『自殺』であり、母が死んでからは実行犯がいなくなったので、父が生きているという状況になっている。

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