第145話 年中無休

僕の町には小さくて古い駄菓子屋さんがある。

 

お父さんが言うには今どき、駄菓子屋さんというのは珍しいらしい。

だから、子供だけじゃなくて、大人もその駄菓子屋さんに結構、来ているのだ。

 

駄菓子屋さんに行ったときに、誰かのおじさんが来ていたらラッキー。

そのときはおじさんに駄菓子を奢ってもらえるからだ。

 

その駄菓子屋さんはおじいさんが一人でやっている。

ビックリするのが、いつでも駄菓子屋さんが開いていることだ。

 

一番びっくりしたのが、台風の日にコンビニもお休みだったのにこの駄菓子屋さんが開いてたことだ。

そこで僕はおじいさんに、お休みはないの?と聞いてみた。

すると。

 

「私が生きている間は年中無休だよ」

「私は天涯孤独だからね。こうやってお客さんに会うのが一番の楽しみなんだ」

「休むってことは誰にも会えないってことだろう? そんなのはもったいないじゃないか」

 

そう言っておじいさんが笑っていた。

 

よくわからないけど、お客さんに会うのが楽しいらしい。

確かにお店で、子供たちを見てニコニコと笑っている。

 

お父さんも「あの駄菓子屋はコンビニよりも信用できる」なんて言って笑っていた。

 

僕たちからしてもお店がいつでも開いているというのは安心だ。

スーパーなんかだと、行ってみたら休みなんてことも結構ある。

かといって、コンビニだと安いお菓子の種類が少ない。

 

だから、僕たちの中ではお菓子といえば、駄菓子屋さんだと決まっていた。

 

だけど、1日だけ駄菓子屋さんがお休みの日があった。

 

その日は開校記念日で学校がお休みだった。

だから、友達とお菓子を食べながら遊ぼうってことになった。

さっそく駄菓子屋さんに行ってみたら、なんと閉まっていた。

僕は駄菓子屋さんのシャッターが閉まっているのを初めて見た。

 

僕たちは「なんだよ! 年中無休って言ってたじゃん! 嘘つき!」と悪口を言いながらスーパーに行った。

 

次の日。

僕は駄菓子屋さんに行って、謝った。

 

だって、おじいさんは嘘を付いてなかったから。

 

終わり。















■解説

おじいさんは「生きている間は」年中無休と言っている。

つまり、「生きていない場合」はお店が休みでも嘘は言ってないことなる。

 

今は駄菓子屋さんはおじいさん以外の人が開いているということなるのだが、おじいさんは天涯孤独と言っている。

駄菓子屋をやっているのは、いったい、何者なのだろうか。

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