第132話 恐怖動画

1年前からユーチューブで配信をしている。

最初は〇〇をやってみた系をやってたんだけど、再生数はよくて2桁だった。

だから、路線変更することにした。

 

ホラー系。

怖いものは一定数視聴者がいるって聞いて、試しにやってみた。

 

その目論見は成功で、再生数は1000倍くらいになった。

けど、今度は逆にネタに困るようになった。

 

やってみた系はなんとなくネタを探せばひねり出せるけど、ホラー系はそうそうネタが落ちてない。

海外のサイトを漁って恐怖映像を探してみたが、すぐにネタが尽きてしまった。

 

となると自分で作るしかない。

いわゆるやらせだ。

 

批判は多くなるけど、単に怖いものを見たいというような視聴者には刺さる。

そこで、数ヶ月前から心霊スポットに探索するという方向へ舵を切った。

 

そしてついにネタ動画の日。

その日は友人にも協力してもらって、心霊スポットに3人で行くという企画にすることした。

俺一人だけだと、どうもヤラセ感が強くなってしまうからだ。

 

佐藤、田中、宮本に連絡して、顔にモザイクをかけるという約束で出てもらえることになった。

佐藤と宮本には、俺と一緒に心霊スポットにいくという形で、田中には霊役をやってもらう。

 

昼間に現地に到着し、3人と念入りに打ち合わせした。

そして、辺りが暗くなり始めたころ、俺たちは収録を始める。

 

昼間に何度も回った場所だが、やっぱり暗くなると雰囲気は一変する。

俺はもちろん、佐藤も宮本も怖いのか声が震えている。

 

考えてみると、今一番怖いのは一人でスタンバイしている田中だろう。

田中には特別に後でいいものを奢ってやることにしよう。

 

ついに仕込みをしている場所に差し掛かる。

佐藤が悲鳴を上げて指をさす。

 

「あそこに変な奴がいる!」

 

台本通りだったけど、雰囲気のせいか本気で怖かった。

あそこにいるのは田中だとわかっていても、逃げ出したいくらい怖い。

 

でも、ここで逃げたら意味がない。

台本通り、騒いで動画の取れ高を確保した。

 

みんなにはお礼を言って、焼き肉をごちそうした。

 

そして動画を編集してユーチューブにアップする。

3人が写っている動画は、やっぱりネタだ、ヤラセだと炎上したが再生数は跳ね上がった。

 

これからもみんなには手伝ってもらおう。

 

終わり。















■解説

語り部と霊役も含めると「4」人写っていないとおかしい。

つまり、佐藤か宮本が動画から消えていることになる。

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