第115話 村八分

山奥にある小さな農村。

村の人口は少ないが、それが返って村人の結束を高めている。

 

その村には様々な独特のルールがあり、村人はみんな、それに従って生きてきた。

村人たちはそれが当たり前だと信じ、それを守ることに何の疑問も持っていなかった。

 

しかし、そんな村にもネットの波が押し寄せる。

当たり前だと思っていたルールが、村独特のものだと若者を中心に知れ渡っていく。

 

そして、村から出ていく人間も出てくるようになった。

 

そんな状況に村長は焦り始める。

より厳しいルールを課して、村人たちを縛り始めた。

 

もし、ルールを破るような村人が出るようなら、村八分を行った。

 

この小さな村で村八分にされた人間は精神を病み、自ら命を絶つ者も少なくない。

それを見て、村人は恐怖し、みんな、村長の顔色を窺うようになっていく。

 

そんなとき、ある家族がこの村に引っ越してきた。

その家族は最初、周りに気を使っていたが、次第に村のルールを破るようになっていく。

 

そこで村長はその家族の村八分を決める。

 

まずはごみの収集場所を突然、変えるという嫌がらせをした。

 

家族は突然、ゴミの収集場所を変えられてしまったので、ごみを捨てられず困り果てる。

そして、色々と村人に聞いて回る。

そこで、家族は新しいごみの収集場所を見つけ、そこに捨てるようになった。

 

村長はそれを見て、またごみの収集場所を変えることにして、新しいごみ収集場所を村八分している家族以外の村人に知らせた。

 

次のごみ収集日。

村長は新しいごみ収集場所にごみを捨てに行った。

 

しかし、そこには先週、村長がごみを捨てた状態のままになっていた。

 

終わり。














■解説

村長がごみを捨てた状態のままということは、そこは「ごみ収集されていない」ということになる。

それは、村長が新しく決めたごみ収集場所が、収集場所として機能していないということになる。

つまり、今まで村八分をしていた村長が、逆に村人たちから村八分にされ始めたことをしめしている。

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