第108話 親ガチャ

親ガチャ。

それは生まれた瞬間、親によって自分の人生が確定してしまうことを言う。

親は子を選べないように、子も親を選べない。

 

少女の家はとても貧乏で、昔からよく我慢を強いられてきた。

本当はピアノの演奏家になりたかったが、ピアノを習うのはもちろん、ピアノを買うなんてことはできなかった。

 

そのため、コンクールにさえも出ることができなかった。

少女は何度も金持ちの家に生まれていれば、自分の人生は大きく変わっていただろうと考えていた。

 

少女の父親は、結婚する前に会社を経営していたが、1度の不渡りを出してしまい、倒産したと言っていた。

あのとき、お金があれば今はもっと楽な生活ができたのにという愚痴を何度も聞いている。

 

少女はその瞬間に、既に自分の人生が決まってしまったのだと思う。

自分が生まれる前に、もう自分の人生は決まっていたのだと。

 

そんなあるとき、少女は自暴自棄でもあったため、黒魔術に没頭した。

悪魔を呼び出す儀式を調べつくし、実践した。

 

そして、少女はついに悪魔を呼び出すことに成功する。

呼び出したのは、時間を司る悪魔、アガレス。

 

少女はアガレスに願った。

20年前の父親に会いたいと。

 

願いは叶い、少女は時間を巻き戻り20年前の父親に会いに行った。

会社が倒産する前の、自分の人生が確定する前のときの父親。

 

少女は父親にある日時の競馬の結果を教える。

それに従えば、大金持ちになれる、会社の危機も乗り越えられると。

 

父親がその言葉を信じるかは賭けだったが、少女は伝えたことに満足して元の世界に戻る。

 

その後、父親は少女の言葉を信じ、競馬でお金を得ることで会社の危機を乗り切った。

 

だが、少女は元の世界に戻ると同時に消滅してしまった。

 

終わり。















■解説

父親は会社の危機を乗り切ったことで、お金持ちになり、本来、少女の母親となる人と結婚しなかった。

そのため、少女は生まれなかったことになり、消滅した。

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