第103話 居候の女の子

俺は一戸建ての家を賃貸として借りて住んでいる。

持ち主は叔父ということで、格安で貸してもらったのだ。

 

金のない俺としては本当に助かる。

ただ、使ってない部屋もあるし、掃除なんかも手間がかかりすぎてあまりやってない。

 

そんなある日、俺は仕事帰りに道端でうずくまって泣いている女の子を見つけた。

事情を聞くと親に家から追い出されて帰るところがないらしい。

 

とりあえず、今日は俺の家に来るといいと言って、女の子を誘った。

まあ、下心がなかったといえば、嘘になるけど、無理やり迫るなんてことはするつもりはなかった。

 

女の子は何も食べてないということで、家に帰る前に外食をした。

そのとき、女の子は笑顔でありがとうと言ってくれて、うれしかった。

その笑顔を見れただけで、晩御飯を奢った甲斐はあったと思う。

 

だが、これがいけなかった。

その女の子は俺の家に住み着き、一向に出ていく気はなさそうだ。

 

漫画やドラマでよくある、ここから恋愛関係になるようなことも一切なく、俺が仕事に行っている間も、ダラダラと家で過ごしている。

もちろん、男女の関係にもなっていない。

 

何もせず、飯をたかり、挙句の果てには俺の財布から金を取る女をこれ以上、意味もなく住まわせるのも限界だった。

だから、出て行けと言った。

 

すると彼女は、自分は未成年で、もし、追い出したら警察に駆け込んで、あることないことを言うと脅してきた。

 

犯罪者になるわけにはいかない。

そう思って俺は我慢することにした。

 

その俺の態度を見て、彼女はさらに調子に乗り始めた。

俺の家に友達を呼んで、一晩中騒いだりするようになった。

 

寝不足の日が続き、俺はついに限界になった。

 

そこで彼女に、寝られないんだ!何とかしないと追い出すぞと怒鳴った。

彼女は警察に駆け込むと脅し返してきたが、俺は別にいいよと言って返した。

 

彼女は少し考えたような仕草をすると、部屋へ戻っていった。

そして、すぐに出てきて、こう言った。

 

「あんたが寝られればいいんだよね?」

 

彼女は俺の腹に包丁を突き立てた。

 

終わり。















■解説

彼女は包丁で刺せば、語り部は病院で寝られると考えた。

もしくは、永遠に寝られるようにしたという可能性も考えられる。

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