第102話 年賀状

俺は昔から特に霊感がないと思っていたんだけど、どうやら違ったみたいだ。

 

この家に引っ越してきたとき、最初の1年くらいは特に何もなかったが、不可解なことが徐々に起こり始めた。

というのも、いつの間にか物の配置が変わっていたり、物がなくなったり、増えたりするようになった。

気になって調べたけど、別に事故物件というわけでもなかった。

 

おかしいなと思いつつ、特に幽霊がいるって感じがするわけじゃないけど、そういうことが続くとやっぱりちょっと不気味だ。

 

だから俺は引っ越すことにした。

年末に急に引っ越しとなると、多少は引っ越しの値段が高くなるが、新年を気持ちよく迎えたいため、引っ越しを決行することにした。

 

引っ越し自体は無事に終わり、荷ほどきまでは終わらなかったが、清々しい気分で新年を迎えられた。

 

年が明けたと同時に、友達から、あけおめメールが届く。

それを見て、そういえば誰にも引っ越したことを言ってないなと思い、あけおめメールの返信に引っ越したことを書いて送った。

 

引っ越しでバタバタしてたせいで、家の中には食材がない。

しぶしぶ、コンビニに買い物に行く。

 

そして、帰ってきたときに、ふと、郵便受けに何かが入っているのを見つけた。

 

年賀状。

 

送り主は聞いたことがあるようなないような人からだった。

 

そういえば、家族にも伝えてなかったし、郵便局にも転送届を出してないことに気づいた。

とりあえず、俺は明けましておめでとうを言うために、母親に電話を掛けた。

 

終わり。
















■解説

誰にも教えていない、また、転送届もしていないのに、新しい住所に年賀状が届くのはおかしい。

つまり、語り部の違和感は幽霊の仕業ではなく、ストーカーが家に入り込んでいたことの違和感だった。

また、年賀状も転送届をしていないはずなので、郵便として届けられたのではなく、ストーカー自身が郵便ポストに入れた可能性が高い。

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