第105話 工事現場

男は工事現場で働いている。

今日も重機を使っての、建物の解体作業を行う。


いつも細心の注意を払って作業をしているが、事故というものはどうしても起きてしまう。


その日も、重機の操縦には十分な注意をしていたが、吊っていたワイヤーが切れてしまい、鉄骨を落としてしまった。

鉄骨は道路の方へと落下し、辺りには衝突音と悲鳴と鈍い破裂音が響いた。


男は慌てて道路へと様子を見に行く。


辺りは大騒ぎになっていて、道路にはジュースが入ったペットボトルが散乱し、中身もぶちまけられていた。


散らばっていたジュースは配送業者が、急発進したことで荷台から落ちて散らばったらしい。


運転手は当然のように男に対して激怒した。

謝ることしかできなかった男だが、散らばったペットボトルの商品には1つも破損がないということで、穏便に済んだ。


男は安堵し、これからも気を付けようと心に誓った。


終わり。













■解説

ペットボトルの商品には1つも破損がなかったのに、「鈍い破裂音」がしたのと「中身がぶちまけられていた」というのはなんだったのか。

つまり、商品には当たらなかったが、「人」に当たった可能性がある。

落下した鉄骨の下には潰れた人間がいるかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る