第91話 レンタルショップ

うちの近くに、古いレンタルショップがある。

そこは、今流行のサブスクなんかにも絶対入っていないようなアニメ作品ばかりを揃えているせいか、あまり客が入っていなさそうだった。

 

ただ、俺の好みにモロ刺さりしているから、かなり愛用している。

今はそのショップが潰れないかが心配だ。

 

そして、今日もそのショップに一週間分のDVDを借りに行く。

 

俺は少し変わった視聴の仕方をしていて、続き物のアニメ作品でも一気に借りるではなく、週に7種類のアニメを借りて、月曜日にはAという作品、火曜日にはBという作品という感じで、順番に見ていくのだ。

 

つまり本当のアニメ番組のように見ている。

 

そんなあるとき、変な奴に嫌がらせをされた。

俺が借りていたアニメの次の巻を全部借りていった奴がいたのだ。

 

偶然なんてありえない。

だって、7種類全部やられている。

今までそのアニメを借りてたのは俺だけだ。

俺が借りていった巻以外はすべてレンタルされていなかった。

 

それにいきなり6巻から借りる奴なんてなかなかいないだろ。

これはどう考えても嫌がらせをされたに違いない。

 

ホント、こんなことして何が面白いんだろうか。

 

仕方がないので、今回はアニメ映画、つまりは1作で終わる作品を7作品借りることにした。

 

次の週。

借りられていた巻は全部戻ってきていた。

 

ホッとして俺は先週の続きを借りようとするが、1作品だけ、先週借りたアニメ映画が前編後編に分かれていたやつがあったので、その後編を借りた。

つまり、いつも通りのシリーズものを6本、アニメ映画の後編を1本を借りたのだ。

 

早速、家に帰って一本目を見ようと、パッケージを開けると小さなメモが入っていた。

それには「す」と一文字だけ書かれていた。

 

その時はたいして気にも留めず、メモをパッケージに戻した。

 

だが、次の日にアニメを見ようとパッケージを開けると同じように「願」と書かれたメモが入っている。

そして、次の日にも、「て」「い」「お」「け」と一文字が書かれたメモが入っていた。

 

なんだか不気味になって、俺は「お」と「け」のメモを捨ててしまった。

 

そして、最後の1本を見て、俺はそのアニメを返して、新しく7本のDVDを借りた。

 

終わり。














■解説

語り部が順番にDVDを借りているのを知った人が、語り部に対してのメッセージを残していた。

そのメモの内容は「す」「願」「て」「い」「お」「け」である。

それを並べると「お」「願」「い」「す」「け」「て」となる。

そして、語り部は1本だけ、いつもの流れとは違い、「後編」の映画を借りている。

つまり、1本だけいつもの流れのアニメを借りていないことになる。

おそらく、その借りていないアニメのパッケージには「た」が入っている可能性が高い。

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