第75話 心霊スポット
夏と言えばホラー。
ホラーと言えば、心霊スポット。
その日、俺たちは浮かれていた。
久しぶりに高校の頃に仲良かった友達が集まったってことで、飲み会をしたのだ。
居酒屋が閉まって、さてどうするかといった話になった時、一人がいきなり「心霊スポットに行こう」と言い出したのだ。
酔っぱらっていたこともあり、一人を除いて全員が「行こう」となった。
たった一人、反対したのは酒が飲めないT。
俺らが酒を飲んでいた横で、ずっとソフトドリンクを飲んでいた。
それでも他の4人に押し切られる形で、Tは渋々OKした。
心霊スポットに向かう車中でも、Tは「やっぱり運転させられると思ったよ!」と愚痴ばかり言っていた。
ノリで心霊スポットに行こうと言い出しただけで、全員がそういうのに詳しいわけじゃない。
だから、実際、どこに行こうってなったときに、結局、ググって調べて近場のスポットに行くことにした。
Yがさらに詳しく調べたらしく、そこは結構、ガチで霊の目撃情報も多いらしい。
到着すると、そこは廃墟というか、火事で燃えた一軒家だった。
恐る恐る入ってみると、当時の火事が凄まじかったのか、壁も燃え尽きてるため、どこが何の部屋かわからないくらいのありさまだった。
家の酷いありさまと不気味な雰囲気により、俺達の酔いもさめてきていた。
俺が「一回りしたら帰ろうぜ」と言うと、みんな、それに同意した。
ゆっくりと家の中を歩いて行く。
「子供部屋だって。火事の時、ここに子供がいたのかな?」
ぽつりとSがつぶやく。
色々なものが散乱しているため、何度も転びそうになりながら、進んで行く。
「ここの書斎で火事が起こったんだ」
誰に言われるまでもなく、みんなが手を合わせた。
「よし、帰ろうぜ」
俺が言うとみんなが頷き、車へと戻る。
帰りはみんな無言だった。
TはYやS、俺を家まで送り届けて、自分の家に帰って行った。
せっかく楽しかった時間が微妙な感じで終わってしまった。
俺は二度と心霊スポットなんか行くなんて言わないぞと心に決めた。
終わり。
■解説
心霊スポットの家は火事で、『どこが何の部屋かわからないくらい』になっていたのに、途中、『子供部屋』や『書斎』の場所がわかったのはおかしい。
実は霊が紛れ込んでいて、説明していたのかもしれない。
また、『他の4人に押し切られる形で、Tは渋々OKした』とあるので、最初は語り部も含めて『5人』いたはずである。
しかし、帰った際、Tは語り部、Y、Sの3人しか送り届けていない。
ということは車には4人しか乗っていなかったことになる。
つまり、1人、心霊スポットで消えている。
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