第74話 ハロウィンの夜
私にはすごく仲のいい、親友がいる。
どこに行くのも、何をするにもいつも一緒の友達。
そんな友達が最近はノイローゼ気味になっている。
なんでも、誰かにずっと見られている感じがするらしい。
しかも、その視線には恨みがこもっているのだという。
私は何度も気のせいだよと言ってみたが、絶対にそんなんじゃないと言い張っている。
精神的に弱っていく親友を放っておけなくて、私は気晴らしにハロウィンに参加しようと誘った。
仮装して人たちが街に溢れる、アレだ。
最初は嫌がっていた親友だったが、被り物で誰だかわからないようにすれば大丈夫と言うと渋々了解してくれた。
一か月前から仮装の準備を進める。
ジャックオーランタンと髑髏のお化けの仮装。
時間をかけたおかげか、結構、クォリティが高いものになった。
完成した時は親友と抱き合って喜んだ。
そして、ハロウィン当日。
仮装をしようとすると、突然、親友が仮装を変わってほしいと言ってきた。
理由はよくわからなかったけど、親友がそうしたいのならと、私は彼女と仮装を交換した。
街につくと、早すぎたせいか、あまり人がいなかった。
それでも、一度帰るのは面倒くさいし、仮装したまま時間を潰そうということになった。
ハロウィンということもあり、仮装したままでお店に入っても店員になにか言われることもなく、逆にノリのいい店員は、トリックオアトリートと言って、お菓子をくれたりする人もいた。
親友も楽しんでいるみたいで、元気にはしゃいでいた。
だけど、そんなとき。
歩いていると、いきなり前を歩いていた女の子が、親友をナイフで突き刺した。
私が悲鳴を上げると、すぐに刺した女は取り押さえられた。
救急車が来て、親友を乗せる。
もちろん、私もそれに付き添った。
青ざめる親友の手を握りしめながら、私は「本当に狙われてたんだ」と、ハロウィンに誘ったことを後悔した。
終わり。
■解説
ずっと狙われていたのは、親友ではなく、いつも一緒にいた語り部の方だった。
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