第65話 妹
5歳離れた妹がいる。
両親が共働きということもあり、妹の面倒はほとんど俺が見ていた。
そのせいか、妹は俺に依存している。
友人の兄弟と比べても、異常なほどに。
かと言って、俺は妹が嫌いというわけではない。
ずっと妹の親代わりをしていたのだ。
可愛くないわけがない。
学生の頃はよく友人に冷やかされていたが、それでも俺は友人よりも妹を優先した生活をしていた。
おそらくそれが悪かったのだろう。
妹は俺への依存を強めていく。
年頃になれば、それもなくなるだろうと思っていたが、俺が大学を卒業する時期になっても、妹の、俺への依存は変わらなかった。
このままでは妹はダメになる。
そう思って俺は就職を機に、家を出た。
俺がいなくなれば、兄離れをするだろうと思っていた。
だが、1年後。
妹が俺の家に押し掛けてきた。
俺の家から大学が近いらしい。
そういう理由と、兄妹の仲の良さもあり、両親は俺と妹が一緒に住むことになんの抵抗もなかったようだ。
だが、俺はこれではより一層、妹が俺に依存してしまうと思い、かなり渋った。
しかも、妹の、俺を見る目が、なんというか兄というよりも異性を見るような感覚がする。
さすがにまずいと思い、俺はある条件を妹に出した。
「彼氏を作るまでは、会話をしない」というものだ。
少々酷な条件だろうと思ったが、それでも妹のことを思えば、これくらいの荒療治は必要だと思った。
妹は了承したが、1つだけ条件をお願いしてきた。
「夕食だけは一緒に食べたい」というものだった。
それくらいならと思い、俺は夕食を一緒に食べることと、その間だけは会話することにした。
夕食のときだけの会話しかしない。
そんな生活が、半年以上が続いた。
妹にそろそろ彼氏ができたか?と聞いてみると「もうすぐできるかも」と笑った。
俺はその言葉に安心した。
それにしても、妹の料理の腕はこの半年間で物凄く上がった。
いつも妹が夕食の準備をするのだが、美味しくてつい、満腹まで食べてしまう。
そのせいか、夜はぐっすりだ。
家事も完ぺきにこなすようになった。
もう、俺がいなくても問題ないくらいというより、きっといい奥さんになるだろう。
そんなとき、妹がいきなり妊娠したと言い出した。
俺は唖然とした。
いくら彼氏を作れとは言ったが、いきなりそこまでするとは思ってなかった。
妹は生むと言ってきかない。
俺もようやく兄離れをしてくれたと考えると、これはこれでいいと思った。
だが、妹に何度言っても、相手を紹介してくれない。
兄として、妹が付き合っている男が気にならないわけがない。
しかも、結婚前に相手を妊娠させる男だ。
俺が彼氏を作れと急かした責任もあるし、妹には幸せになって欲しい。
相手がろくでもない男なら、別れてほしいとお願いするつもりだ。
ただ、妹が会わせてくれないので、探偵を使って調べることにした。
今日は探偵から結果を聞く日だ。
探偵のところへ行くと、「妹さんと付き合っている人はいません」と言われた。
終わり。
■解説
夕食は妹が作っていたこと。
夕食を食べた後、語り部は夜は深い眠りについていたこと。
そして、妹に付き合っている男はいない。
つまり、妹を妊娠させた男は語り部ということになる。
(妹が寝込みを襲ったということになる)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます