第43話 前世の記憶

俺には前世の記憶がある。


 


と言っても、最初からあったわけじゃなくて、15歳の頃、突如、思い出した。


なぜ、このときになんだろうと不思議に思ったが、すぐに納得できた。


 


それは前世のときに死んだ年齢だからだと思う。


いや、死んだというより殺された記憶だ。


同級生に後ろから殴られたところで、記憶が無くなっている。


 


最初は誰も信じなかった。


まあ、俺自身も半信半疑だったから、当然だと思う。


 


けど、一度も行ったことのない場所なのに、色々と言い当てることができたし、住んでる人のことだって、言い当てることができた。


前世で死んでから、生まれ変わるまで20年くらいしか経っていなかったというのもラッキーだった。


多少は変わっていたけど、逆に、変わる前のことを言い当てたことが、さらに信用を高めたんだと思う。


 


前世の俺は、見た目は全然違うし、生活も全く違った。


立ったり、話したりするのは他の子供よりも早かったそうだ。


子供の頃は神童なんて呼ばれていたらしい。


 


けど、家が貧乏だったせいか、成長するにつれ、俺は荒れた生活をするようになった。


いわゆる、不良とつるんで悪さばかりしてた。


喧嘩、万引き、カツアゲ。


そりゃもう、ホント、これでもかってくらい、悪さばかりしてたよ。


 


周りからは悪童なんて言われてさ。


死ねばいいなんて思われていたよ。


まあ、俺も今、前世の俺を見たら、同じことを思うんじゃないかな。


 


一番、ぶっ飛んでたのはアレかな。


17のときにおっさんを刺し殺して埋めたことかな。


いやあ、ホント引くよね。


 


あ、ごめん。


これは内緒ね。


……いや、いくら前世のことでもさ、嫌な記憶だよ。


早く忘れたいね。


 


せっかく生まれ変わって、まさしく第二の人生を歩めるんだから、今回は真面目に生きたいって思ってるよ。


周りの人に感謝されるような生き方をさ。


終わり。














■解説

語り部の男は、前世は『15歳』で死んでいる。


しかし、語り部は『17歳』で人を殺していると言っている。


つまり、人殺しをしたのは、前世ではなく、生まれ変わった後。


語り部の口調も段々と崩れていっている。


前世は殺されているので、その復讐をした可能性が高い。

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