第44話 応援
僕は昔から、何をやってもダメだった。
勉強も、運動も、人付き合いも、何もかも。
それが原因で、学生の頃は酷いイジメにもあった。
でも逃げたくないって思って、意地でも登校拒否にはならなかった。
大学を出て、社会人になっても、何も変わらなかった。
学生の頃みたいなあからさまなものではなかったけれど、会社でも意地悪されることが多い。
何度転職しても、それは同じだった。
両親からは仕事を辞めて、生活保護をとったらどうかと提案されたけど、やっぱり僕は逃げたくなくて、意地でも生活保護は拒否し続けた。
でも、それにも限界がやってきた。
いや、限界というよりも、強制終了だ。
会社の先輩が不正に横領していたことを、全部、擦り付けられた。
会社は懲戒解雇となり、多額の賠償金を支払うこととなった。
両親は自殺し、身内は僕一人だけになった。
もう限界だ。
人生から逃げ出したい。
今まではどんなことからも逃げずにやってきたけれど、今回ばかりはもうダメだ。
僕は今、崖っぷちに立っている。
人生のどん詰まりという奴だ。
これ以上、生きていても良いことなんて、何もないだろう。
もう逃げたい、投げ出したい。
そんな気持ちでいっぱいだった。
だが、同時に恐怖心もある。
逃げ出して、投げ出して、その先に希望なんてあるのだろうか?
今まで、逃げずにやってきてたじゃないか。
そんなとき、ふと、ある女性のブログを見つけた。
彼女も僕と同様に何をやっても上手くいかないことがつづられていた。
それでも懸命に生きて、人生に立ち向かっていた記録が残されていた。
ブログを最後まで読んだとき、僕の中で勇気がわき上がってくる。
彼女が背中を押してくれた気がした。
そう。難しく考える必要なんてなかったんだ。
もっと気楽になればいい。
そう考えると、一気に心が軽くなった。
僕は一歩、大きく踏み出した。
終わり。
■解説
語り部が崖っぷちに立っているのは、比喩ではなく、実際に立っている。
一歩、大きく踏み出せば、どうなるのか……。
女性のブログも、「最後まで」読んだとあるが、ブログは更新が途切れることは多いが、「最後」に締めくくるものは珍しい。
つまり、女性も「最後」を迎えたことになる。
その最後を見て、心が軽くなった、一歩踏み出したとあるので、女性も語り部と同じ道を辿ったという可能性が高い。
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