第42話 呪いのビデオ

昔、凄く流行った呪いのビデオ。


見た人は7日以内に、他の人に見せないと死ぬ、みたいなやつだ。


正直、俺は今の時代、そんなものがあるとは思ってもみなかった。


だって、ビデオの時代の話だから。


今なんて、ビデオデッキを手に入れることすら困難な時代だぞ。


信じろって方が無理な話。


 


だから、つい、ホラー動画を見るみたいな感覚で見てしまった。


というより、1万円を渡されて見て欲しいと、友人に頼まれたからだ。


今回の呪いのビデオは、7日以内に新しく3人に見せないといけないらしい。


今、地元で流行っていて、友人も友達に頼まれて、見てしまったのだという。


 


ビデオの内容は別に大したものじゃなかった。


いくつかのシーンが切り取られて、流されている感じで、面白くもなんともなかった。


もう少し凝ったのを作れと思ったほどだ。


 


次の日。


ニュースの中で、地元の人間が5人、同時期に不審死したことが取り上げられていた。


しかも、その5人は、当時はバラバラの場所にいたそうだ。


 


もしかしたら、呪いのビデオかもしれない。


俺は急に怖くなり、とりあえずAに呪いのビデオを見せた。


 


あと2人。


 


だが、呪いのビデオの噂と実際に5人が亡くなったことで、みんなが警戒を始めて、見て欲しいと言っても断られてしまう。


 


そうこうしている内に3日が過ぎる。


そして、またも不審死が出た。


 


俺はもう怖くなって、夜も眠れなくなった。


こうなったら、なりふり構っていられない。


 


俺は貯金を全額降ろして、10万を用意し、クラスのギャルっぽいCさんにビデオを見て貰った。


パパ活もやっている子で、10万を渡せば、すぐに見て貰えた。


 


これであと1人。


 


だが、俺はここで致命的なことに気づく。


貯金を全て使ってしまったので、同じ手は使えないのだ。


 


ヤバい。


 


そして、また3日が経った。


期日が迫っている。


 


そんな中、Aが不審死したという噂が耳に入った。


 


やっぱり、呪いのビデオは本物だったんだ。


俺はどうしようもなく、追い詰められた。


 


いやだ。死にたくない。


 


俺は5歳になる弟に呪いのビデオを見せた。


 


何とか間に合った。


弟のことはまた明日から考えよう。


 


俺は何日かぶりに、安心して眠りについた。


終わり。















■解説

Aは、語り部よりも「後」に見たはずなので、語り部よりも「前」に死ぬのはおかしい。


ということは、Aは語り部よりも「前」に呪いのビデオを見たことになる。


そうなると、Aは既にビデオを見ているので、「新しく3人に見せないとならない」という条件に当てはまらない。


語り部は眠りについたが、再び、目覚めることは無い。

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