第41話 悪魔の取引

少年はどうしても、新しいタブレットが欲しかった。


周りはみんな持っていて、少年が持っている古いタイプでは流行りのゲームもできない。


少年はみんなの話についていけないことも多くなり、孤立しつつあった。


母親に何度も買って欲しいと懇願したが、あんたには必要ないでしょの一点張りだ。


 


ある時、少年はこんな話を目にする。


自分の臓器を売って、スマホを買ったという話だ。


 


少年は臓器なら、売っても親にバレないだろうし、いい案だと思う。


そして、実際に臓器を買い取ってくれるところがないかを探し始めた。


 


そんな時、突如、少年の前に悪魔が現れて、ある提案をしてくる。


それは、悪魔と契約して、あるものを差し出せば、最新のタブレットを渡すというものだった。


 


少年は躊躇する。


悪魔なんかと契約したら、何をされるかわからないからだ。


だが、悪魔はそんな少年の心の中を読んだように、言葉を続けた。


「大丈夫。魂や寿命をよこせというわけじゃない。体の先っぽをちょっと貰うくらいだ。たくさんある、先っぽをね」


「健康には一切、影響しない。それどころか、お前が100歳まで生きれることを保証しよう」


「俺がもらうものは、最初から無い人間だっているし、生きていく中で無くなる人間だっている」


「多少は生活が不便になるかもしれない。だが、そのおかげで国からお金が貰えるかもしれないぞ」


「……え? 目だって? いやいや、そんなものは貰わないよ。見えなくなったら、せっかく貰ったタブレットでゲームができないだろ? 俺は悪魔だけど、そこまで酷いことはしないさ」


「しかも、親にバレないようにしてやるぞ。親の記憶を改ざんするから、お前が怒られるようなこともないのさ」


 


少年は少し怖かったが、悪魔と契約することにした。


どうしても、新しいタブレットが欲しかったのだ。


 


悪魔と契約を交わすと、少年の手には最新のタブレットが載せられていた。


少年はさっそく、起動させてゲームをしようとした。


 


しかし、あることに気付き、少年は最新のタブレットを叩き割った。


終わり。












■解説

悪魔が契約で持っていったものは少年の指。

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