第39話 異世界へ行く方法
Aはこの世界に辟易していた。
代わり映えの無い、繰り返しの毎日。
仕事やダルい人間関係、希望を見いだせない未来。
かといって、自ら命を絶つという決意も出来ない。
そこでAは、「異世界」に興味を持ち始めた。
こことは違う世界に行くというのは、まさにAが望んでいることだった。
Aは色々と、異世界に行く方法を調べていく。
片っ端から、見つけた方法を試して見るが、一向に、異世界に行ける気配がない。
そして、Aは最後にエレベーターを使う方法を試すことにした。
エレベーターに乗って、まずは3階、2階、4階、2階、5階に行く。
この間に誰かが乗ってきたら失敗。
5階に行ったら、4階まで降りる。
その時に、若い女性が乗ってくる。
次に、また5階のボタンを押したときに、上に行かずに下へ向かう。
そして、1階についたときに異世界に行ける。
そういう方法だった。
一般的に知られている方法とは少し違うが、実際に行ったという書き込みが多いことで、Aはこの方法を信じた。
Aはこの方法を何度か試すが、どうしても、途中でエレベーターに人が乗ってきてしまう。
どうにかして、人が乗って来なさそうな建物を探すA。
そして、ようやくAは見つけることができた。
それは、廃墟となったビルだった。
今にも崩れそうなほど古くなった建物。
それなのに、なぜか、エレベーターが動くのだ。
ここなら、絶対に途中で人が入って来ることは無い。
そう確信して、Aはさっそく試すことにした。
エレベーターに乗り、3階、2階、4階、2階、5階に行く。
当然だが、その間、誰も乗って来なかった。
ようやく、ここまで成功したAの気持ちは高揚する。
そして、次に4階へと降りる。
ここで、若い女性が降りてくれば、ほぼ成功だ。
ドキドキしながら待っていると、4階で止まり、ドアが開く。
しかし、そこには誰もいなかった。
Aは失敗か、とため息をついた。
だが、つい、5階のボタンを押してしまう。
すると、エレベーターは一度大きく揺れた後、物凄い勢いで下へと向かって行く。
成功したのか!?
Aは喜んだ。
そして、エレベーターが1階に着いた時、Aは異世界に行くことに成功した。
終わり。
■解説
Aは今にも崩れそうな廃墟のエレベーターで、この方法を試した。
1階に着いた時に異世界に行くことに成功したというのは、4階のところで、エレベーターのワイヤーが切れ、1階に落下したことで、Aは命を落としたということである。
また、古く、廃墟になっていたエレベーターだったため、安全装置も作動しなかったと考えられる。
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