第38話 固定電話

春から大学生になる俺は、念願の一人暮らしができることになった。


一人暮らしをするために、わざと地元から遠い大学を選んだのだ。


 


で、その家にはネット環境が整っていただんだけど、オプションだかなんだか知らないが、固定電話のサービスも付いていた。


ただ、俺はスマホを持っているし、固定電話なんて使わないだろうと思って、放置していた。


 


数ヶ月が経った頃、大学でも数人の友達ができ、大学生活も順風満帆に過ぎていった。


その年の夏、友達の一人が夜通しで、怪談の動画を見ようと言い出した。


友達と俺は面白そうだと盛り上がった。


 


で、それを俺の家でやることになった。


さっそく、家の中を掃除して、食べ物を用意する。


用意するって言っても、買うだけだけど。


それで、後で、かかった金額を割り勘にするのだ。


 


部屋を掃除していると、ふと、使っていなかった固定電話を見つけた。


あれから一度も使っていなかった固定電話をふと、使いたくなり、俺はその電話からピザ屋に電話して、ピザを頼んだ。


そして、その後、俺はある悪戯を思いついたのだった。


 


数時間後、友達がやってきて、俺達はピザを食べながら階段の動画を見る。


その動画が結構、怖いもので、正直、俺も背筋が寒くなった。


でも、そのおかげで、俺の悪戯の効果が上がるだろうと、俺はワクワクした。


 


動画が終わった頃、俺は飲み物を持ってくると言って、2人から離れる。


そして、固定電話に友達の一人の携帯番号を打ち込む。


 


すると、当然、友達の携帯が鳴り始める。


物凄くビビる2人の友人。


 


知らない番号からかかってきたと言って、ビビりっぱなしだ。


そりゃ知らない番号だろう。


だって、俺の固定電話からかけたのだから。


 


ビビッて出ようとしない友人に、俺は「ホント、ビビりだな」と鼻で笑って、通話ボタンを押す。


するとすぐに、プツっと切れた。


 


そんな俺の行動に、友人たちはすげえと褒めてくれる。


この悪戯は大成功をおさめた。


 


それから何事もなく数日が過ぎた頃。


俺は友達の家に、スマホを忘れてしまった。


 


取りに行くのが面倒くさいなと思っていたとき、ふと、あることを思い出した。


友達に電話して持ってきてもらおう。


そう思って、固定電話の再送ボタンを押した。


 


すると、ピザ屋に電話が繋がったのだった。


終わり。













■解説

固定電話から再送ボタンを押したのなら、友人のスマホに繋がるはずである。


だが、ピザ屋に繋がったということは、この固定電話からは友人にかけていないことになる。


では、友人のスマホにかかってきたのは、誰からだったのか。


また、固定電話からかけたのであれば、語り部がスマホの通話ボタンを押したとき、あちらから切れるのはおかしい。


 

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