第15話 休日のゲーム
俺は無類のゲーム好きだ。
RPGも好きだけど、やっぱりアクションが一番。
休みの日は寝ずに、ぶっ通しでやることも少なくない。
前はTPSにハマっていたけど、最近はレトロなレースゲームなんかに夢中だ。
基本的に、何かを操縦するっていうのが好きなのかもしれない。
だからってわけじゃないけど、仕事の為にフォークリフトの免許を取って、乗り回している。
……乗り回しているって言っても、ちゃんと業務で使っているってことだけどね。
配送業者で、倉庫に荷物を運んだり、配送の手配をしたりするって仕事だ。
もちろん、フォークリフトは荷物を運ぶのに使うっていうのもあるんだけど、ハシゴ代わりに使うことも多い。
倉庫にはたくさんの段数があり、そこから物を取るには普通はハシゴを使わないといけない。
でも、フォークリフトをハシゴ代わりに使うってわけ。
当然、見つかったら、危ないって怒られる。
けどさ、現場なんてこんなもん。
やっぱり、楽な方をやっちゃうよね。
で、俺はフォークリフトの端に立っている人の掛け声で、「右」とか「上」と指示されて、その通りにフォークリフトを操作するってわけ。
最初は指示通りにフォークリフトを動かすのは面白かったが、次第に飽きてきた。
だから、自分の中で、もう一つ難易度を上げた。
それは、目をつぶって、指示だけでフォークリフトを操作するって方法だ。
倉庫の段の高さや距離感は頭に入っている。
で、指示だけを聞いて、見ないで指示通りに動かすっていうのをやっているのだ。
最初は難しくて、なかなか上手くいかなかったが、これも次第に慣れてきた。
うーん。やっぱり、ゲームに比べると難易度はどうしても低くなるなぁ。
当たり前の話だけど、フォークリフトを操作すること自体に飽きてきた。
それで、その分、休日にゲームにハマるって流れだね。
今月はいわゆる繁忙期で、物凄く忙しかった。
休日出勤もあって、ほとんどゲームが出来ない日が続いた。
だから、その分、久々の休みにゲームに夢中になろうと思っていたのだ。
そして、ついにやってきた休日。
今回は、あまりやってきていなかったシリーズのゲームをやろうと思う。
あの有名なゾンビが出てくるゲームだ。
さっそく、ゲームを始めたんだけど、これにはビックリした。
操作が普通と違って、ラジコン操作ってやつだった。
慣れるのに、かなり時間がかかった。
もしかすると、何かを操作している人には、逆に慣れるのが大変かもしれない。
長時間の練習の末、ようやく操作に慣れてきた。
だけど、そこに時間がかかってしまって、クリアをする頃には外が明るくなってたんだよね。
つまり、徹夜でやってたってこと。
あーあ。今日は寝不足で仕事に行かなきゃならない。
辛いけど、自業自得だ。
ゲームはほどほどにってことだね。
その日ももちろん、指示する人に合わせて、フォークリフトを操縦した。
「下、下、下」
指示する人が叫ぶように指示を飛ばす。
うーん。今日はなんか、調子が悪いな。
集中しよう。
すると、指示する人の声が止んだ。
よかった。上手くできたみたいだ。
終わり。
■解説
前の日にラジコン操作で操縦の感覚が狂っていた語り部の男。
しかも寝不足により、判断力も鈍っていた。
そんな中、フォークリフトに乗った人が、ずっと「下」と言ってということは、フォークリフトは「上」に操作していたということになる。
そして、指示する人の声が途絶えたということは……。
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