第4話 双子の誕生会

私は昔からよくイジメられていた。


歩くのがうるさいとか、先生に可愛がられてるとか、なんか気持ち悪いとか、ほとんど言いがかりみたいな理由で。


それで色々と意地悪された。


教科書や机に落書きされるのは別にいいんだけど、上靴とか連絡帳を隠されるのは正直、困った。


けど、私もやられっぱなしというわけじゃない。

しっかりと仕返しはする。


私は人よりも耳が良いみたいで、教室の端にいても、全員の話していることを聞き取れるんだよね。

だから、悪口とか、誰が誰を好きとかっていう話を聞き取って、本人にバラしたりして、友人関係を壊すなんてこともやってたんだ。


……今、考えると結構、悪質だよね。

でも、私も同じくらい意地悪されたから、おあいこってことで。 


だけど、今回は完全にこれが裏目に出た。

クラスメイトの葵が、そんな私に目を付けてイジメ始めたのだ。 


これがかなり悪質で、今までは意地悪で済む程度だったんだけど、怪我をするくらい。

しかも、周りには自分がやったってバレないようにするのが上手い。

仕返ししようにも隙を出さないし、ホントに困る。 


そんな中、私を庇ってくれる人もいた。

違うクラスの朱莉ちゃん。


葵とは双子で、親でも見分けが付かないくらいそっくりらしい。

今まで見分けられた人がいないんだってさ。

まあ、私からしたら、全然違うでしょって感じなんだけどね。 


とにかく、葵と朱莉ちゃんは双子でも、性格は真逆。

朱莉ちゃんは本当に優しくて、いつも私の味方をしてくれる。

ホント、天使って、朱莉ちゃんみたいな子を言うんだと思う。


そんなとき、葵と朱莉ちゃんの誕生日会を開くってことで、家に呼ばれた。

最近の葵は本当に調子に乗ってて、手が付けられないほどだ。

だから、私はちょっとした悪戯をすることにした。


「誕生日会で葵に不幸が訪れる」


そんな手紙を出してやったの。

葵はこんなのはただの悪戯だって強がってるけど、ずっと朱莉ちゃんの近くにいるから、大分、ビビッているみたい。


そっくりな朱莉ちゃんと一緒にいれば、相手が見分けがつかないはずだから、大丈夫だって思ってるんだろうね。


ざまあみろ。


これで少しは懲りたか、って思ったときだった。

急にバンと音がしたと思ったら、みんなが叫び始めた。


物凄い混乱ぶりだ。


それから5分後。


今度はさっきよりも凄い悲鳴が聞こえてくる。

阿鼻叫喚ってやつ。

なんと、葵が包丁で刺されていたみたい。


すぐに警察が来て、葵の両親や誕生会に参加している人たちからの事情聴取を始める。


そして、警察は私を容疑者として逮捕した。


調べたところ、葵になにか目印みたいなものを付けられてた痕跡がなかった。

だから、『停電で暗闇の中』、葵を特定して刺せる人間は『盲目』の私しかいない、だって。


うん。いい推理だね。


私が、葵と朱莉ちゃんを判別できることは、みんな知ってたし。

私が警察だったら、きっと同じことを考えたと思う。


でもね、私は数日後に釈放されたんだ。

なぜなら、真犯人が見つかったから。


え? 誰が犯人か、って?


いるじゃない。

私以外で見分けることができる人が。


――もう一人だけ。


終わり。









■解説

犯人は朱莉。

親でも見分けがつかないくらいそっくりな双子でも、本人にはどっちが葵かがわかる。

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