第3話 勇者にドン引きした件について【改稿】
「え? もしかして僕の宿まで着いてくるつもりなの?」
謎の同盟宣言後、このゴスロリ銀髪幼女メアリーはテクテクと僕の後を着いてきていた。
「当たり前なのじゃ! 今日からそなたとは所謂同盟者。寝食を共にするのは当たり前だからの!」
「いや同盟者とかなった覚えないですし。ていうか絵面的にかなり危ういから勘弁してくれませんかねぇ……」
何をどうしたら当たり前になるのだろうか。おかしいだろ。
まぁそんなことより。傍から見たらかなり危ない光景なんじゃなかろうか、これ。全身黒づくめの男とゴスロリ幼女。うん、僕だったら通報するね。
しかし、問題の本人は引き下がる気は全くないらしく、鼻歌まじりなまである。
「はぁ……」
「男おのこが情けないため息を吐くもんじゃないぞーーっとなんじゃ、ぞろぞろと無粋じゃの」
家までの帰路。人影が見当たらない通路に差し掛かった所で、メアリーは何故か急に立ち止まった。
「ヒヒヒッ、ヒトラ・ブラド。お前に恨みはねぇんだがよぉ。これも勇者様のお導きってヤツでなぁ」
突如に現れたソイツらは全身黒づくめであり、いかにも暗殺者のような出立をした集団だった。どうにもホームパーティーとかをするわけじゃなさそうだ。
その出立も言動もまさに暗殺者という感じで、
「ヒヒヒッ、ヒトラ・ブラド。てめぇの絶望に染まる顔が……ってそんなに驚いてねぇな」
うわぁ、ドン引きですわ。
ドン引きもドン引きだし、ここまでコッテコテのテンプレだと何もかも予想がつく。
「いや、もう察したわ。どうせあれでしょ、勇者パーティーの汚点とかだから消えて貰うとかそういのでしょ。ひくわーまじでひくわー」
仮にも勇者な癖して、そんな小悪党みたいなことするのが本当に残念だわ。ひくわー。
「あーまぁその通りなんだけどよぉ。色々苦労してんだなぁお前」
暗殺者は何故か僕に向けて、この上なく哀れな存在を見つけたような視線を向けて来ている。ついにならず者にまで同情されてしまった件について。
「ヒトラ、お主なんか暗殺者にまで同情されてるんじゃが」
「うっさいぞロリババァ」
まぁ、ぶっちゃけるとそれなりにショックなんですけどね。追放はされたものの、これまで苦楽を共にしてきた仲間であることに間違いはない。それがまさか暗殺者を差し向けるとか酷くない?
「ついでに逃してくれると嬉しいんだけど。ほら、最近ラブアンドピースが主流だと思うんだよね。人類皆兄弟的な」
まぁ、僕を追放した糞野郎共は地獄に堕ちればいいと思うけど。
「噂どおりほんと聞くに耐えねぇ
その号令と共に暗殺者達が凶刃を煌めかせて一斉に飛び出した。
だが、彼らの凶刃が僕に届くことはない。その前に紅き円刃が体を囲うように駆け抜けた。
「
斬ッッッ!!!!!!!!!
「な、なんだ!? ーーがぁっ!?」
一斉に襲いかかってきた暗殺者達が血刃で切り捨てられた。
僕は血術使い。自らの血を代償に様々な
そして血術の利点はその汎用性の高さに他ならない。自在に血を操り形や高度までをも変化させる。刃を形成することぐらい朝飯前なのだ。
「ぐ、ぐおぉ……糞痛ぇ」
切り伏せられた暗殺者達は苦悶の表情を浮かべ呻き声を上げていた。深い傷ではあるが決して致命傷ではない。これで諦めてくれると嬉しいけど。
「まぁ、そんなわけもいかないよねぇ……」
世の中、本当に世知辛い。嫌になるね。
「ヒヒヒッ腐っても元勇者パーティーってわけだ。でも、それだけにテメーの致命的な弱点ももちろん知ってんぜぇ。野郎共! 畳み掛けろ!!」
暗殺者の背後から更に十を超える黒外套が湧き出る。糞が、一体全体何人いるんだよ。
「糞ッ!
斬ッッッ!!!
斬ッッッ!!!!!
斬ッッッッッ!!!!!!!!!!!!
「ヒヒヒッ、案外に粘るねぇ。しかしそれも何時まで続くかなぁ? 続かないよなぁ、何せ血術使いは燃費が悪いもんやぁっ!」
糞、本当にありがたくて涙が出るね糞が。一体何人の暗殺者を屠っただろうか。いくら切り捨ててもキリがありゃしない。
「くっそ、ぶん殴りたくなるような顔しやがってっ。まだまだいけるっての」
強がるが奴の言っていることは間違っていない。血術の発動には血を必要とする。当然に使用するのは自らの血なわけであり、血術使いはその力を使えば使うほど消耗してしまう。そして最後には貧血で倒れてしまうのだ。
今まで術は四度しか使用していないが、四方からの攻撃に対応するためにかなり広範囲に放った。当然血液の消費も激しく、もう何度も発動は出来ないだろう。糞、八方塞がりか。
「おいおい、まだそんな軽口を叩けるのかよ。これだけの人数相手に随分と余裕だな、おい。流石勇者パーティー様なわけだ」
「言葉は正しく使って欲しいね。元だっつーの、元」
まだ敵は二十を軽く越える。減るどころかむしろ増えているまである。血液残量も芳しくない。というか軽く貧血気味だ。
まぁ要は軽く絶体絶命なわけだった。
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