第2話 ロリババァが呼んでないのに来た件について
「さて、これからマジでどうしよ」
夕暮れ時、何年も苦楽を共にしたパーティーから数秒で追放された哀れな男が一人。
全身黒ずくめで何とも辛気臭そうな奴だ。知り合いにいたら困るレベル。
まぁ、うん。ていうか僕だった。
「上手くいっていた筈なのにな……」
どうしようもないほど惨めな言葉が漏れた。自分なりに頑張っていたつもりだが、その結末の果てが追放。目的もあったがそれも叶わずじまいだ。
さりとて、求めた結果を得れなかったところで人生は続く。物語のように結末を迎えれば『はい終わり』とはなってくれないわけで。
自殺するつもりがなければ、何らかのことをして生き続けるしかないのだ。
「はぁ、これから本当にどうしよ」
本当に迷う。いっそソロで迷宮に潜って生計を立てるか?
うーん、でも正直僕はそんなに強くないんだよなぁ。
しかし、他に選択肢があまりないことも事実。
たいした学も地位もない僕がまともに働いたところでろくに稼げないことは目に見えている。
しかも、過度な労働を強いられて過労死する未来すら考えられる。ブラックまじ怖い。
そう考えると冒険者を続けるの一択だ。
まぁ冒険者自体、死の危険は常に付きまとうがそこまで悪いものでもない。
いつからか存在するのか、この大陸には各地に迷宮ダンジョンと呼ばれる魔物が巣食う巨大地下空間が存在している。
迷宮に挑み、戦利品から稼ぐ存在を冒険者と呼ぶのだ。
迷宮からは様々なものが得れる。倒した魔物から取れる素材や
一攫千金のようなリスクが高いことを今更するつもりもないが、今までの経験や知識を活かせばそこそこ安定して稼げるだろう。
「うん、そうだ。そうしよう冒険者を続けよう」
そう決めると少しばかりだが心が軽くなった。
そんな矢先、水を差すように不届きな人影が現れた。
「ぬふふっヒトラ・ブラド! ようやくその気になったかの!」
「出たな! ロリババア!!」
声と共に幼女が視界に飛び込んできた。シルバーブランドの髪に黒を基調としたゴスロリ服を身に纏う。そしてそのツルペタボディーには見覚えがあった。
急に来るなよ。思わず暴言が出ちゃったじゃん。僕は悪くないぞ。
「おうこらババアってなんじゃ、ババアって! しかもロリとか矛盾しているじゃろ!!」
「いや、言葉通りじゃん。見た目幼女なのに貴方様は一体全体何歳ですか?」
「小僧……貴様れでぃには年を聞くなと習わんかったのか?」
そんな事言われましても。
彼女、メアリー・ヴァンピールは残念ながら知り合いだ。
目の前で偉そうにしているメアリー・ヴァンピールは見た目まんま幼女だし。そのくせ喋り方は幼女と言うより老婆。実際彼女がいつからこの街にいるか分からない。そんな噂すらあるのだから致し方ないだろう。
「れでぃ(笑)かは年齢聞いてから判断しまーす」
「こやつ失礼すぎるんじゃが。大体妾はそこまで生きておらんわ! まだピッチピチの千五百歳じゃ!!」
やっぱりババァじゃねえか。
「いや、もうババアじゃん。まごうことなきババアじゃん。もうババア通り越してエンシェントババアじゃん」
「なんじゃよエンシェントって! ていうかババアババア言いすぎじゃ! 妾泣くぞ!! 泣いてしまうぞ!!」
涙目になったところで虐めるのを一旦やめた。僕は色々あって疲れているのだ。さっさと要件を聞いてご退場願おう。
「で、何さ。僕は今けっこー忙しいんだけど」
「ぬふふ聞いたぞ! お主がぱーてぃーとやらを抜けたと! つまり、我と同盟を組むためにそうしたのだろうっ!!」
えぇ……全然違うんですけど。
「照れるでない照れるでない。しかして聡明な妾はそなたのその健気かつ初々しい心情をしかと把握しておるぞ。今日から妾とそなたは同盟関係じゃ、ナーハッハッハッハッーーー!!!」
彼女は唐突に現れて。問答無用に言葉を続けて。そしてそれが決定事項のように哄笑した。しかも、その態度は断崖絶壁なお胸様を爆乳と言い張るぐらいに傲岸不遜だ。つまりは図々しい。
それらに僕はただただ呆然とする他なかった。
え? これ決定な感じ?
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