追放された血術使いは堪忍袋の緒がブチギレたので倫理観を捨てるようです~お前の血は全部僕のもの。根こそぎ全部寄越せオラ
灰灰灰(カイケ・ハイ)※旧ザキ、ユウ
第1話 血術使いってだけで追放された件について
「ヒトラ・ブラド、お前には今日限りでパーティを抜けてもらう」
はい?
僕は今しがた聞いた言葉が信じられなかった。
だってそうだ。
古の迷宮探索が終わり『あー疲れたーもうアルコールを流し込んで体を浄化しなきゃなー』といきつけの酒場でエールを口につけようとした瞬間。いきなりパーティーリーダーのジークにクビの通告をされたのだ。わけが分からないよ。
「じょ、冗談だよね?」
「この顔が冗談に見えるか? 大体お前も分かっているだろ。俺達は勇者パーティーと認定されるんだ。お前程度の実力じゃこれからの戦いについてこれないってことに」
現在このパーティは、苦難の末に大迷宮の未踏破層である九九層に到達した。そして遂に正式な勇者パーティーとして認定されたところだ。
魔王の復活が噂され不安が渦巻く中、数百年ぶりの勇者誕生という喜ばしいニュースに大勢の人たちから注目を集めることとなる。何もかもこれからと言う時にこれだ。文句の一つも出る。
「い、いや! ま、待ってよ! そりゃ確かに僕に目立つところはないけど、色々サポートで役に立っていたはずでしょ!?」
どれだけジークに訴えたところで、彼の険しい表情が変わりそうもない。
他のパーティーメンバーも似たような表情をしていた。
何故こんなことに?
日頃の行いは誉められるかは怪しいが、そこまで悪いものでもなかったはずだ。
あれか。日に三回ぐらい神様に向けて唾を吐いてるのが不味かったのか。
まぁ、あれは僕にそんなことをさせる神様が悪いのでノーカンノーカン。
「アンタなんかもううんざりなのよっ!!」
治癒師のリーヴァが叫んだ。
しかし、こんな状況でも僕の視線は顔ではなく、そこよりやや下。つまり、お胸様だ。彼女の黄金比とも言えるそのお胸様は今日も健在だ。
人形のように整った顔やつり気味な目、やや癖っ毛のある明るい茶髪よりも、お胸様のが本体なのでは?と僕は常日頃疑問視していたりする。
彼女は堪忍袋の尾が切れたと言わんばかりに叫び始めた。
やだ、ヒステリック。
「毎回毎回水を指すようなことしか言わないし! 辛気臭いし!! 何より根暗で気持ち悪いのよ!!!」
ひ、ひでぇ。それが仮にも苦楽を共にした仲間に言う言葉かよ。
「それなそれなっ。俺ちゃんも思ってたわ~それ。ヒトちゃんね~合わないのよソウルがねソウル。この俺ちゃんのヒートなハートのウェイブとトゥゲェザ出来ないっすわぁ~」
チャラ男で弓師のパウルがリーヴァに続く。
何がソウルだソウル。てめーは女のけつ追うことしか考えてねーだろが。こいつに話しても無駄だ。他に訴えかけよう。
「そ、それでも僕は必死にサポートしてきたはずだ! いきなり追放なんて理不尽にもほどがあるんじゃ……」
「あぁん!? 何言ってやがるんだてめぇは!! てめぇは何もかも中途半端だろうが!! 支援も大した効果はねぇし、魔術だって本職には遠く及ばねぇ!! 戦闘力に至っては雑魚じゃねぇか!!」
今度は僕の言い分を聞くに耐えないと言わんばかりに、
「た、確かに僕の
「ごちゃごちゃ五月蝿えんだよ!!!」
言葉を言い終わる前にグンテルが口を挟んできた。僕の言葉を聞くのすら耐えられない。そんな感じだ。
「だいたい血術使い如きが俺ら勇者パーティーと肩を並べている事自体がおかしんだよっ!! 分かるかテメェの立ち位置! 本来テメェみたいな魔族崩れは俺らと話せているだけで暁光ってもんだ! 図々しんだよ、この人間もどきがっ!!」
思わず絶句した。
血術使いが世間でそう揶揄されているのは知っている。
だけど、まさか苦楽を共にしてきた仲間に『魔族崩れ』なんて最大級の侮蔑をするようなことを言ってくるとは。
「ジークもそう思っているの……?」
藁にもすがる思いで彼に視線を向けるが無意味だつた。彼の表情は胃が締め付けられるほど冷徹なもので、決して仲間に向けるものではない。
「残念ながらこれはパーティーの総意だ。今までは西の勇者の推薦もあったため我慢していたがそれもそれまでだ! 大体これから勇者パーティーになる僕らに
「……分かったよ。出て行けば良いんでしょ、出て行けば」
「やっと消えてくれるのねっ!! ほんとっ清々するわ!!」
「ギャハハハハ!! このクソ無能魔族がようやく出て行きやがるぜ!!! 少しの間でも勇者パーティーの一員でいれて良かったなぁ! てめぇみたいな魔族崩れには一生味わえねぇ幸運だろうよ! ま、てめぇの名前は抹消するから残らねえんだけどな!!!」
リーヴァとグンテルは厄介者が消え去ったと人目も気にせず大笑いしている。そこまで好意的に思われていないとは感じていたが、まさかここまで嫌われていたのか。
僕なりにこのパーティーには尽くしていたつもりだ。しかし、その結果がこの様だ。渇いた笑いすら出ない。
僕はもう何も言わず酒場を後にした。
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