第2話

 放課後の教室。クラスの生徒が部活あるからと掃けていった後には、静寂が残るだけ。


 僕はそんな空間に、何をするわけでもなくとどまっていた。


 3階の1-5教室。この窓際の席で、太陽の光をすのこ越しに浴びる。


 「お前、体調悪いのか?」


 携帯のポップアップには、同じ水泳部の先輩からのメッセージが届いている。だけど、既読をつけるのは、もう少し後にしようと思った。

 

 僕は、今まで部活には皆勤賞だったが、ここ最近は参加する気分になれないでいた。

 

 なぜか。それは楽しくなくなったからだ。


 他の部員と特段親しいわけではない。人間関係を楽しめないとなれば、部活に残るのは体力を吸い取るという機能だけ。

 

 練習にいって、疲れて、帰る。ただこれだけのサイクルに、僕は意味を見い出せないでいた。


 開けられた窓から、水泳部が張り上げる声が聞こえてくる。

 今日の気温の低さを、その気合いで吹き飛ばそうとしているように思えた。


 今はどんな練習をしているのかと、廊下にでて、プールサイドを見下ろす。


 一人がプールの壁を蹴り、勢いよく泳ぎだしてすぐに、後続が食らいつく。

 水しぶきが、プールの水面に多くはねているのがわかる。


 この調子は、50Mダッシュ。練習メニューの中でも最も体力を使う、そして疲れるものだろう。


「あ、サボりじゃん。」


 ヤバい、水泳部員か!

 突然の声に、驚いて後ずさった。


 ……そこには小田がいるのだった。


「……お前も同じようなもんやろ」


 サボりを指摘してきた小田は、同じ水泳部。そして、練習に参加せず、3階の廊下にいる。同じくサボりだろう。


「いや、違うし」

 

 小田は左手に抱えるポテトチップスをつまみながら、否定した。大きなかけらを、二口にわけて食べながら言う。


「戦略的休憩だから」


「何それ」


「練習に毎回いくなんてしんどいじゃん?だから定期的に休みを作るの」


 極めて真面目な顔をして小田はいう。ボリボリと、ポテチップを噛みしめるたびに、小さなカスが廊下に飛び散っている。

 そのコントラストが、どこか面白さを感じさせた。


「じゃあ僕もそれで」


「ほほう、気が合うね」


 僕も小田も、最近、なんとなく部活にいきたくないのだった。


 2人はその後、部活代わりに塾へと向かうのだった。

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彼女はいつも、僕の憧れだった 国作くん @Kokusaku

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