やっぱり恋愛小説を読んでも、体調不良は治らないのよ!

 モーリス領の早朝も、大分寒さが和らいできたように思う。まだ上着は必須だけれど、それでも冬用の分厚いものは必要なくなった。


 しかし今日は、モナルク様は洗濯物モフササイズをなさらなかった。不思議に思いつつもお散歩コースで待ち構えていたけれど、そちらにも現れなかった。


 ベニーグに聞けば、やはり体調を崩されたらしく、今日は自室でお休みするとのこと。


 何故昨日の内に薬を渡さなかったんだと責めたかったけれども、ぐっと堪えた。ベニーグも、この上なく心配そうな顔をしていたから。私に言われずとも、軽く受け流してしまったことを深く反省しているに違いない。

 だったら追い打ちをかけるような真似をしてはいけない。


 お洗濯をしていても、お掃除をしていても、庭の手入れをしていても、ピンクの影がチラつくことはなかった。具合が悪くて休んでいらっしゃるのだから当然ではあるのだけれど、もしかしたら……と期待する自分がいて。


 しかし期待は見事に裏切られ、その日モナルク様の姿を見ることはなかった。


 丸一日モナルク様に一度も会えなかったのは、モーリス邸に来て初めてのことだった。




■アエスタによるモナルク様観察記録■


・体調を崩されたそうだ。とても心配。

・お薬効いたかしら? お食事できてるかしら? 脱水症状になってないかしら? とてもとても心配。

・心配……だけどそれ以上に会いたい。



□シレンティ用ベニーグ情報□


・ベニーグも落ち込んでるみたいだった。モナルク様の具合、思った以上に悪いのかしら?

・上の空だったのか、珍しくお料理を焦がしてた。

・魔法も弱々しくて、庭園の水やりは霧みたいな水系魔法、掃き掃除はそよ風みたいな風系魔法だった。



[シレンティからの追加情報]


・やはりベニーグも元気がなかったらしい。

・毛艶もあまり良くなかったそうだ。

・取ってこいのタイムも過去最遅だったとのこと。

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