はちわめ 今の前の私
この世界線のわたしがどのような人だったのかを探ることにした私は、テレビデッキの上に置いてある写真を見てあることに気がついた。
「これって…」
私が女の子だという以外逆行以前と驚くことに変わらなかったのだ。
性別が変わったから前とは全く違う生活をしているかと思ったが、そうでもないようだ。
まぁ、姉と同室やら色々おかしいところはあるが。
部屋といえば、気になったことが他にもある。
どうやら私には趣味がないようだ。というのも、机の上やベッドに何一つ趣味っぽいものがない。本も教科書のみ、鍵付きの引き出しは空っぽ。
姉のを見ると色々と趣味のものが置いてある。
部屋の片方は賑やかなのに、もう片方は生活感のない質素なバランスの悪い部屋になっている。
TS前のこの頃は覆面ライダーとかにハマっていて、変身ベルトやらフィギュアなどで部屋をすぐに散らかして、親に「片付けなさい!」ってよく怒られていた。
────
──
ゲームも遊び道具もない私はテレビをボーッと見つめるしか無かった。
(腹減った…)
気付けばもう7時。誰も帰って来ないので、私は冷蔵庫を漁り始めた。
両開きの扉を開けるとチルド室の上に張り紙が貼られた小さいお皿(私用)と大きな皿(姉用)があった。
『レンジでこのまま温めて食べてね。ママより』
私は小さい方の皿を出しレンジで温める。
「いただきます」
温められてホカホカの母の作り置き生姜焼きを大きな口で頬張る。
アチッ
少し温めすぎたのか熱い。
一緒に温めたお米は逆にぬるい。
腹が減っていた私は一瞬でたいらげた。
「ご馳走さま」
食器を片付けようと、席を立ったとき姉が帰ってきた。
「ただいま~!」
勢いよく廊下への扉を開けた姉は食器を持っている私を見ると、何故か固まっていた。
(なんか変なことしたか?)
しばらく見つめ合うと姉が足から崩れ落ちた。
私は驚いて食器を置き姉の元へ寄る。
姉「………てる…」
「え?」
姉「美里が一人で夕食食べれてる…」
(ん?)
姉「大丈夫!?電子レンジ使えた?」
「えっ。あっ…うっうん…」
姉「美里ぉぉぉ!成長したねぇぇ!グスン」
(えっ…えぇ~)
突然泣き出した姉にさらに驚いた私はしばらくオロオロした。
泣き止んだ姉は目をパンパンにしながら夕食を食べる。
にしても、小4の私がまだ電子レンジを使えなかったのは衝撃だ。もしかして、とても過保護で育てられてきたのだろうか。
姉「そういえば美里」
「なに?」
姉「今日の学校はどうだった?」
(どうだったと言われても…)
姉「友達とは仲良くできた?」
「うん。叶笑ちゃん達が話しかけてくれた」
叶笑ちゃんと言うと姉の笑顔がより一層増した。
姉「叶笑ちゃん達とはどんな話をしたの?」
「うーん。遊びの約束とか?」
姉「えっ。本当!」
(何故当の本人じゃなくて姉が喜んでんだか…)
姉「いつ遊ぶの?」
「11時に叶笑ちゃん家でって…あっ日にち聞くの忘れてた」
姉「大事なところじゃない!ちょっと待っててね」
姉はそう言うと固定電話を取りどこかへ電話をし始めた。
姉「ありがとねー」ガチャ
「誰にで…」
姉「明日だって」
「え?何が?」
姉「何がって遊ぶの」
「電話して聞いてくれたの?わざわざ?」
姉「困ってる妹を助けるのは当然でしょ」
「あっ…ありがとう」
これは過保護確定だな…
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