ななわめ お話し

TS後初の学校に登校した私。今は4年生最後の始業式を終え、お喋りタイム中だ。


叶笑「にしてもまた、美里ちゃんと一緒にいられるの嬉しいなぁ」


紗香「そうだね!また、前みたいに遊びたいなぁ」


絵莉「美里にまた迷惑かけるのね」


紗香「んもぉ!迷惑かけてないもん!そうだよね美里ちゃん」


絵莉「わかるわけ無いでしょ。今の美里は」


紗香「あっ。ごめん…」


紗香は犬が耳を垂らして落ち込んでる様になった。


美里「いいよ。別に。それより前の私はみんなと仲良くやってたみたいで良かった」


叶笑「そうだよ。だから、これからも仲良くしようね」


美里「う…うん」




こんなふうにみんなが仲良く話してる中、ひとりぼっちでノートに何かを書き込んでいる子がいた。

美里の隣の席。四人でワイワイと騒いでいる隣で、まるで周りに大きな壁を作っているかのように彼女は何かを書いている。


お話し中だが、どうしても彼女が気になってしまう。たしか隣に座ったとき小さな声で喜んでいた子だ。


にしても何を書いているのだろう。なんか…適当にペンをグルグル回しているように見えるけど…


「ちょっと美里ちゃん?聞いてた?」


「あっ。ごっ…ごめん」


そっぽに気が取られていた私に叶笑がかわいいぷくっとした顔で怒った。


叶笑「もう…。私の家で今度遊ぼって話してたんだよ」


絵莉「んで、向かうのは11時でいいの?」


叶笑「うん。みんなでお昼ご飯食べながらお話しよ」


紗香「わーい。たのしみ!」


叶笑「それじゃあ。集合は私の家に11時ね」


美里「えっ。あえ?」


突然決まった遊びの予定に戸惑い私は何も言えなかった。


綺月先生「それじゃあ、お話をやめてくださーい」


考える暇もなく先生の声がかかる。


綺月先生「みんな座ってー。帰りの会始めるわよ」


────

──


結局そのまま遊びの予定について驚きが隠せず、学校が終わった。


上靴を脱ぎスニーカーを履こうとした時、目の前に隣の席のあの子がいた。


(試しに話しかけてみよ)


私はスニーカーを転けそうになりながら履き、その子の元へ駆け寄った。


「こんにちは」


話しかけると彼女は驚いた表情を見せ、オドオドとし始めた。


「こっ…こんにちは…」


どうやらコミュ障らしい。私もだが…


「さっき何書いてたの?」


「いっいやあのぉ~あれは…」


「答えにくいならいいよ」


「あっ。はい。そっ…それでは!!!」


彼女は逃げるようにどこかへ走って行ってしまった。


(ちょっと近づき過ぎたかな?)


────

──


帰りも安田さんに送ってもらい私は家のリビングでくつろいでいた。


家には誰もいない。父も母も仕事、姉はまだ学校にいる。

姉は8時には部活が終って帰ってくるだろうが、父と母は10時にならないと帰ってこないだろう。

というのも、父は大企業のCEOをやっている。そして、母は有名なファッションモデルをやっている。逆行前にもちょくちょくインターネット上で見かけるほどだ。


さて、今この家に私ひとりな訳だが、このチャンスを無駄にするわけにはいかない。

私はこの世界線の私がどのような人だったのかを探ることにした。


周りを見渡すとテレビデッキの上に写真がいくつかあった。


1つは家族全員の集合写真だ。私はまだ幼く、幼稚園くらいだろうか。母の足元で無邪気に笑顔でピースしている。

その隣には、私が姉に抱えられて両手を大きく広げている写真がある。


「これって…」



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