9 犬、拾った。飼っていい?
「犬、拾った。飼っていい?」
開口一番、
「迎えが来るまで、世話をしてやるがよい」
そう言って誘鬼たちが連れ帰った仔犬を飼うことを許してくれたのだが、
仔犬の名前はポチとなった。名付け親は誘鬼だった。誘鬼曰く「ポチっぽい顔をしているから」なのだそうだ。それを言うなら、紫苑にはタロウっぽい顔に見えると思ったのだが、分かりやすいし
「犬って、何を食べるの?」
「そうでございますねぇ。雑食ですから夫婦喧嘩以外なら、肉でも魚でも何でも食べると思いますけど、え? 仔犬? ああ、ポチでございますか。ポチでしたらトウモロコシが好物だと華多菜様がおっしゃっていましたわよ」
「トウモロコシ?」
「ええ。トウモロコシをあげたら喜ぶそうですわよ」
「わかった。ありがとう、妖女ちゃん」
誘鬼はきょろきょろと足元を見ながら
「華多菜さん、なんでも知っているね」
「うん。言われないとトウモロコシなんて食べさせようって思わなかった。しかもそれが大好きなものなんてな」
「うん。好きなもの知れてよかった」
紫苑は笑うと側へ寄ってきたポチをみてかがんだ。黒い頭に手を添え優しくなでると、ポチはくうくうと喉を鳴らして身体ごと尻尾を振った。しかしポチは、犬らしくワンとか、仔犬であるからキャンとでも、そういう鳴き声はまだ一度も出していなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます