5 月明りの下で夜ゴハン
夕暮れ時。
西の空は明るいみかん色に染まりはじめていた。ひんやりとした空気が、昼間の太陽で温まっていた空気を混ぜるように、ゆるゆると流れてくる。日当たりの良かった
「月が出たら、夜はここがいちばん明るいところだ」
渡殿を歩きながら
「じゃあ、ここで寝たらまぶしくて寝られないね」
「うん。爺様はよくここでお酒飲んでたよ」
「ふうん。なんかカッコイイ」
藍色が混ざりはじめた空を見上げ、
「だから、今日はお月見をしながら、ここで夜ゴハンを食べよう!」
そう言うと、誘鬼は紫苑の手を取って
誘鬼の言うとおり、渡殿に座して外を見やると、いい具合に月が見えた。先代である祖父が好んでここで酒を飲んだというのも、子どもながらによくわかると紫苑は月を見上げて思った。
渡殿で
夕餉が目の前に並べられると、誘鬼たちの意識はたやすく月から逸れた。思い思いに好きなものをほおばり、久しぶりの従兄弟との再会に、子ども同士近況報告をしあっていた。誘鬼たちの腹が満たされた頃、
「紫苑は茶屋ではいつも何してんの?」
「華多菜さんの宿題やったり手習いやったり」
「宿題? どんなの?」
「書き取り」
「……手習いも書き取りじゃん」
月見などとうに飽きた誘鬼たちは、履物を履いて月明かりが照らす庭を歩き回っていた。
紫苑の返答に、机に向かうのが苦手な誘鬼が渋い顔をすると、紫苑はくすくすと笑った。まだまだ筆を握って机に向かうよりは、草むらをかき分け虫を捕まえたり、雲や鳥を追いかけて駆け回る方が楽しい年頃だ。紫苑に手を引かれていた
そうして、紫苑が
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます