2 お世話になります
鏡のように磨き上げられた
通された奥の間は、陽光を受け止めた渡殿からの反射光で柔らかく照らされていた。多少の馴染みはあるが、奥の座敷まで通されたのは、紫苑の記憶にある中では初めてだった。
座敷に案内された紫苑は、この屋敷の主である
紫苑の家である峠の茶屋と本家との距離は、大人の足でなら近いと感じないまでもさほどではないところであったが、子どもの足ではそれなりに遠く離れていた。
見知った場所とはいえ、やはり心細い。おとなしく座して大人たちの話を聞くともなく聞きながら、沈む心にあわせるように紫苑の視線は下を向いていった。
「任せておけ」
知らず知らずに垂れていた頭を、ぽんと叩くような明るいその声に紫苑はハッとして声の主を見た。
「別にこれまでと大きく変わったことをするわけではない。紫苑も普段どおりに過ごすがいい」
だいぶ前から話はまとまっていたのだろう。華多菜はさやに向かって力強くうなずくと、自分を見つめる紫苑にニヤリと笑ってみせた。
――この
艶やかな華多菜の笑顔は、なぜだかいつもそのように見えてしまう、峠の茶屋の倅・紫苑。数え六歳の初夏だった。
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