第4話 迷宮入り

―――シュナード公爵領内―――


 都市に入るかなのか門番がいる。


 こっちにはフェスト姉さんとピアレスさんがいるから顔パスができる。

 

「ピアレスさん、ほんとにありがとうございました!またどこかで会いましょう!!」


「おう!またどこかで会おうな!それまでに二人とも、もっと立派になるんだぞ!!」


「「はい!!」」

 

 馬車からも降り、ピアレスさんはまた予定があるからと別れの挨拶をし、いなくなっていった。

 

「さて!歩いて向かうよ。ザンブルクに入ったばっかだけど君たちはシュナード公爵が会いたいって言っていたからシュナード様の家に来てもらうよ!」


 ……シュナード公爵か。


 おいおい……マジかいきなりすごい人に会うの?


 心の準備ができない。


 本当にこの人は何から何まで急すぎる。


 隣を見たらチャックも驚いていた。


「「わかりました」」


 フェスト姉さんより気が付けばこの都市の説明が始まった。


「シュナード公爵家のある場所はね……この都市……ザンブルクの真ん中にあるの。そこを中心として……冒険者が集まるギルドや学校などがあって、そして住宅街に繋がっているような仕組みね。このつくりは……王都と同じようなものが採用されているんだけど、王都と同じにできる許可をもらえたのは並いるシュナード公爵家だけなのよ。そう考えるとこの都市のそして……シュナード公爵家のすごさがわかるわね」


 王都と同じか……。


 それだけでも十分すごいと思う。


 なのに同じが許されているのがここだけと……。


 ……すごすぎるだろ!


「ほんとにすごいんですね!ここ!!」


「そうなのよ!」


 フェスト姉さんがここが大好きだって想いが伝わってくる。


 僕も好きになれるかな……。


 ……みんなと長くいたあそこよりも。


「さぁて……二人ともついたよ!それでは扉を開けて失礼しまぁす!!」


 急な掛け声に驚きつつ僕たちもつづける。


「「失礼しまぁす!!」」


 入った瞬間、いかにも紳士な人がきた。


 服を見るに執事なのだろうか……。


「フェスト様!もっとお静かに入って来れないのですか?!ここは公爵様のお家なのですぞ!」


「おお!ガドじゃないか久しぶりだね!」


 名前……ガドなんだ。


 いい名前だな、なんかかっこいい。

 

「あなたのノリに合わせるならば、お久!であっているでしょうか?」


「お久以外の言葉がいらないわ!」


「そうでしたか、それは失礼。そして……その子たちが例の?」


「そうよ。後で見てあげてね」


「もとより公爵様からご指示をいただいていたためもちろん見ます。」


「よろしく頼むよ!」


「お二方申し訳ございませんでした。名乗るのが遅れてしまいましたね。私の名前はガドと申します。以後お見知りおきを」


 ガドさんとフェスト姉さん、二人の話が終わった。


 そしてガドさん……。

 

 子どもの僕たちにも敬語使うって本当に紳士でいい人だな……。


 紳士には紳士で返さねば。


「僕はガンビアです。よろしくお願いします」


「俺はチャック。よろしく」


 ……チャック、相変わらずタメ口だな。


 それをずっと通せるのも逆にすごいと思う。

 

「お二人とも良いお名前ですね。では先ほど話したように後にのぞかせていただきます」


 のぞく……か。


「「わかりました!」」


「それにしても特にガンビア様は若くして立派でございますね」


 やった!


 褒められた!


「ガドもそう思うっしょ!やっぱり!」


「そう思いますが……これとさっきの話は違いますぞ!」

 

「わかった、わかった!ごめんね!……で、パードレ様はどこにいるのかな?」

 

「はぁー……。あなたにはいつも振り回せれてばっかですね。公爵様はこの奥のお部屋にいらっしゃいます」


「やっぱそこか、ありがとう!」


 フェスト姉さんに続いて僕たちも感謝を伝える。


「「ありがとうございました!」」

 

「いってらっしゃいませ」


 ガドさんが深く頭を下げてくれていたので僕も下げた。


 先に進んでいたフェスト姉さんとチャックについていく。


「二人ともここが、さっき言われていた部屋だよ」

 

 ここがシュナード公爵がいる部屋か……。


 入るの緊張すると思ってビビっていたらいたらフェスト姉さんがノータイムで言った。


「コンコン!パードレ様入りまーす!」


「入りなさい」


 シュナード公爵の声がとんでもないほど低いと思って聞いたが、実際に聞こえたのは思った以上にイケボだった。


 いい声……。


「それじゃ二人とも入るよ」


「「うっす」」


 とうとうシュナード公爵がいる部屋へ踏み入る。


「「「シュナード公爵!!!ここにBR三人組参上!!!」」」


「入室早々ふざけんとんのかー!威厳もくそもねぇーじゃねぇーかー!まずBRってなんだよ!またフェスト、おまえか!」


「すんません!」


 


 ――どうも!ナレーションのものです!どうしてガンビアとチャック、フェスト姉さんがバカな名前で登場したのにもバカらしい理由がある。それはフェスト姉さんが入室前に提案して二人も最初は拒否していたんだけど二人もまだまだ子どもだからフェスト姉さんの勢いについのってしまいました!以上!ナレーションでした!――


 


「まあ、もういい。怒るのも疲れた。今日もいろいろあったのだ。それで、報告にあったのはその子たちか?」


「そうです」


 フェスト姉さんが初めてふざけずに話した。


 珍しいところを見れたと思う。


「右にいるのがガンビアくんで左にいるのがチャックくんでいいかな?」


「「はい、そうです」」


 チャックと共に頷き答えた。


「入室の態度を見る限り心配の必要はないと思うんだけど、そんなに子どもはかたくならないでいいんだからね。そして私の名前はパードレ=シュナードだ。よろしくね」


 パードレ様が名乗りながら手を出してくれた。


 握手とお辞儀しながらそれぞれ言った。


「「よろしくお願いします」」


 フェスト姉さんがまた口を開けた。


 きっとまたやばいことを言うのだろう。


「じゃあ私もかたくならないでいい?」


「おまえはもう16歳で立派な成人女性だろ」


「チェッ」


「……チェッは違うだろ」


 会話自体はそこまではやばくはないと思ったが舌打ちしたことには驚いた。


 だって自分が仕える人だぞ?


 そして思った以上にパードレ様がフラットに接して話してくれる。


 ありがたいけど……。


 偉い人にされると……、僕はやりづらいと感じてしまう。


 そう考えているとパードレ様が咳払いしながら話し始めた。


「だいぶ話が脱線してしまったな。本題に入るわけだが君たちと会いたいってことで呼び出した。しかし、もちろんそれだけで終わるわけではない」


 三人が静かに頷く。


「私は君たち二人のことが気になっていてね。そこで、どんなものか知るためにガドを呼んだ」


 ドアが開かれてさっきいた多分執事なガドさんが来た。


「先程ぶりですね。お三方」


「なんだ、あとで見るって言ってた癖に今見るのか」


 フェスト姉さんがまた言った。


 口開けばこの人やばいことばっかしか言っていないと思う。


「なんだ、さっきあったのか」


「はい……、お会いしました」


「まあいい、ガドよろしく頼む」


「かしこまりました。それではガンビア様とチャック様、前の方に出て来てもらってよろしいでしょうか?」


「「はい」」


「私の異能は""読心""といいまして、あなた方の情報を知ることができます。それはあなた方が知っている以上の情報を抜き取ることができ、もちろんその人物が今何を考えているかなどもわかります。条件などもございますが、お二方が読み取る許可をいただけたら今言った全てのことが可能になります」


 ……なるほど。


 とんでもない異能だ……。


 もしかするともう……どっかで読まれていた可能性もあるな。


「ではまず初めにガンビア様、読ませていただきます。力を抜いて、リラックスした姿勢でいてください。許可の方をお願いします」


 緊張するが……そもそも嫌だな……。


 仕方ないパードレ様の命令でもあるし……。


 ……他人に本当は見られたくなんてない。


 見られて……嬉しいものなんてない。


 だけど僕は覚悟を決めて言う。


「……はい!」


「ありがとうございます!では参ります!」


 ――ガンビアが覚悟を決め、ガドが異能を発動したその瞬間ガドとガンビアは気絶した――

 

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