今年の国民的アイドルな幼馴染からの誕生日プレゼントがまさかの幼馴染本人だった。

タカ 536号機

アイドルがなにしてんのっ!?


「____っ。もう朝か……」


 休日の朝、カーテンの隙間から差し込む光によって起こされた俺は枕元にあるスマホを手に取りベットから降りる。


「休日ってことは今日は三食も作らなきゃだな」


 俺は洗面所で歯を磨きながらそう呟く。1人暮らしの大学生にとって休日は休みではなく普段やれないこと……例えば掃除や物の整理などをやらねばならないので意外と休みはない。

 大学に行っている時は昼は学食で済ますが休日はそうもいかないのでご飯も三食分必要だしな。……コンビニとかで済ませたくもあるがなんか嫌なんだよな。


「は〜、ダリ」


 ピンポーン。


 俺が朝からやらないといけないことを沢山発見し、憂鬱な気分に陥っているとインターホンが鳴った。


「こんな朝っぱらからなんだ? 配達なんて俺頼んでないし……」


 俺が疑問符を浮かべながら玄関へと向かっいるとスマホがピコンと鳴る。


 俺がスマホをポケットから取り出すとそこには俺の幼馴染である天道 一花いちかから『誕生日プレゼントを今年も送ったよ〜。そろそろ届いてる頃合いだと思う』というメッセージが届いていた。


「そっか、今日俺誕生日か」


 一気にこのインターホンの音の意味が分かった俺は少しテンションを上げて玄関へと向かっていく。


「にしてもアイツマジで毎年律儀に送ってくれるな」


 アイツというのは勿論、先程のメッセージの送り主である一花のことである。一花はファーストと言う芸能名で活動する今を輝く国民的アイドルなのだ。

 そんなアイドルがわざわざ俺の誕生日に気をきかせてプレゼントを贈ってくれてると思うと少しだけ申し訳ない気持ちになるがこちらも一花の誕生日には贈っているので許してほしい。



「なんか今年は気合い入れたとか言ってたけどなんだろうな。……別にそんなに豪華じゃなくていいんだけど」


 そして俺はそんなことを思いながら少しルンルン気分で玄関の前まで来るとチェーンと鍵を開け、扉に手をかける。


「はーい、今開けますからね」


 俺はそう言い扉を開けていく。すると……。


「はい、お届け物の誕生日限定の貴方だけのアイドル一花ちゃんですっ」


 何故かそこには現役国民的アイドルであり俺の幼馴染でもある天道 一花本人が立っていた。


「はっ?」


 当然、俺は意味が分からず少しの間硬直してしまったが。


 *


「いや〜、相変わらず綺麗好きは健在みていで。あっ、なんかいやらしい本みっけ」

「おいっ、勝手に弄ってんじゃねぇ!!」


 部屋に上がるなり勝手に物を弄り始めた一花に俺は叫び声を上げる。……来るって分かってたらもう少しちゃんと隠したんだが。


「まぁ、でも相変わらず彼女は出来ていないようだね(笑)」

「相変わらず一言も二言も余計だな。つーか、マジでなんで来てんだよ。アイドル」


 俺は誰のせいだと思ってんだと思いながら一花の言葉に対し反抗をしながら今日の1番大事な部分を尋ねる。

 コイツは現役アイドルで休日なんてないはずなんだが?


「うーんと、まぁ抜け出して来た」

「マネージャーさんに今すぐ電話して来てもらうからな〜」

「待ってよっ! せっかく来たのにすぐに帰らそうなんて酷いよ」


 俺が一花のスマホを奪いマネージャーさんに連絡を入れようとすると一花に全力で止められてしまう。……いや、普通にするだろ。


 つーか、やっぱりこいつは相変わらず可愛いな。テレビ越しに毎日見ているはずだがこうして目の前にするとやはり可愛さが際立つ。

 整っている元気そうな目に黒く腰まで伸びた美しいストレート。アイドルというだけあってスタイルは抜群だし。

 本当に可愛い。しかし、中身がその分相当残念なんだがな。



「それに今日は午前は仕事ないからっ、だから大丈夫だよ。……まぁ、佐倉マネージャーさん探し回ってはいるだろうけど」

「せめて連絡くらいは残してやれよ」

「それに関しては机の上に「探さないでください」って書いたから大丈 Vブイ

「なんでむしろ不安にさせてんだよ」


 俺がそうツッコミを入れるが一花は意味が分からなかったみたいでコテンと小首をかしげていた。……くっ、相変わらずの天然ボケだったか。

 クイズ番組とかに天然ボケ要員で呼ばれる国民的アイドルめ。さすがといった所。


「でも、だからと言ってこっちだってアイドルの相手なんて出来る生活送ってないんだよ。さっさと帰れ。ほれっ」


 しかし、アイドルがこんなとこにいたなんて話になったら困る俺はなんとか一花を追い出そうとする。しかし、


「追い出そうとしないでよ。そんなことしたら私この部屋の前で入れて貰えるまで泣き叫ぶからね。フライ◯ーの記者とか来て熱愛報道とかされちゃうんだからねっ」

「ぜひ、穏便に話合おうじゃないか。お嬢さん」


 一花からとんでもない脅しを受けて諦めることにした。……まぁ、当の一花本人は「まぁ、フ◯イデーされるのもアリっちゃアリだけど」とか恐ろしいことを呟いているが多分冗談だろう。


「んで、結局なにしに来たんだよ?」


 そして要件を済ませて早くお帰り頂くことに決めた俺は次の手へと移るが返ってきた返事は、


「誕生日を祝いに来たっていったじゃん。はい、これ誕生日プレゼントっ//」


 そんな能天気すぎる返事と変な紙だけであった。


「えっ、なにこの紙?」

「結婚届……だよっ」

「へぇ〜、結婚届ね。……えっ? 誰の?」


 聞き流そうした俺であったが信じられないものを聞き思わずなにやら真っ赤な顔でそっぽを向いている一花に聞き返してしまう。


「うぅ〜んと、私とハヤテの」

「はぁっ!?」


 そして返ってきた一花の返事に俺は更に混乱する。


「さっき街中ですれ違ったお婆さんに証人の欄は書いてもらって私の所も書いてあるから後はハヤテの欄だけだよ」

「えっ、なにこれ。なんのドッキリ?」


 一花の言葉を聞き結婚届をもう一度見た俺は本当に俺以外の欄が埋まっているのを確認して冷や汗を流す。


「ドッキリじゃないよ。結婚……しよ?」

「いや、そんな可愛く言われても」

「ダメなの?」

「いや、だからしな____」

「私のこと好きじゃないの?」

「……」


 潤んだ瞳の一花にそんなことを言われてしまった。俺は。俺はっ。


 その日、俺と一花は結婚した。


 そしてその日、俺が学んだことを1つ。


 現役アイドルのおしパネェ。




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 あとは読者様のご想像にお任せします。


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