第27話

 お金の話、弁護士費用やら法律扶助といった話は、弁護士は丁寧に説明してくれた。けれど、どれだけ訊いても細かすぎる金額になるとよくわからないので、はあはあと相槌を合わせておいた。弁護士費用は月額ローンで支払うことも可能だったが、前の派遣先がお金をくれたので、それで一括で支払うことにした。そうなると、この弁護士とは今回でお別れだったし、他に法律家にお世話になることもないだろうから、もう二度と会わないのかもしれなかった。

 そう思うと、なんだか寂しい気もした。私はこの人のことをほとんど何も知らない。数回会って話しただけなのだけど、わりと親身になって話を聞いてくれたし、前のトラブルも諦めていた頃に、新しい展開が訪れて、自分の傷ついたきもちは少しづつ癒されていっていると感じていた。事務所のドアの隙間からは、別の部屋が見えた。山のような書類や資料が積み重なった山があった。私のトラブルもあのファイルのひとつなのだ。

 弁護士はやや怪訝な表情で、不可解そうに「大丈夫ですか?」とわたしに訊いた

。自分からの説明は以上だけど、何か不明点はありませんか?

私はあわてて「先生のおっしゃる通りだと思います、それでいいです、質問はありません」と答えた。

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