第22話

大家は、「ちょうどよかった」と言い、「手伝ってくれる人はいないかと探している店があって…」と言って仕事を紹介してくれた。

大家は、私が住むことになったアパートとは別に、別に貸しビルも持っていて、貸しビルを午前中に掃除してくれる人を探していると言った。私は、ちょっと考えて、承諾した。私に他にどんな選択肢があるだろう?

貸しビルは、徒歩圏内だったが、大家は「古い自転車があるからよかったら…」と貸してくれることになった。自転車で十分程度の古ぼけた五階建ての貸しビルだった。一階には、不動産業者と思しき会社が入っているが、二階より上はやはり賃貸アパートのようだ。清掃バイトは、貸しビルの周囲と、階段、共用部分の清掃やゴミ出しでマイペースで作業できる。なるべく丁寧にやっても、午前中で終わってしまった。土日は休み。社会復帰にはこのくらいがちょうどよいかもしれない。

十日くらい働いた後、大家は仕事を見に来た。

「真面目に働いているそうじゃないの」と褒められて、私は照れたけれど、大家は私に他に何か言いたいことがあるような気がした。アパートの管理会社の社員が教えてくれたように、いったん打ち解けると親切というか世話好きな人のようだった。

「あんた、パソコンは使える?」と大家は私に訊いた。

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