第21話

引っ越しの日が来たが、思ったより荷物は少なかった。単身世帯だし、なにより近所だからそれほど大変な引っ越し作業ではなかった。大人が両腕で抱えるサイズの段ボールが四箱と、折り畳み式のテーブル、レンジ、カラーボックス、そんなもの。インコ二羽と私は歩いて移動する。ネットで検索すれば、おひとり様向けの引っ越しサービスはたくさんあったが、今の時期は少々予約がとりにくいくらいだった。春の新学期なので、学生やサラリーマンの引っ越しラッシュなのだろう。

引っ越す部屋は一階だが、一階はあまり人気がないらしい。なぜ一階は人気がないのだろうと調べてみると、女性の場合、窓から中を覗かれたり、下着を盗まれたりする危険があるということだった。私はこれまで生きてきて、そういう目に遭ったことはなかった。だから一階で暮らすことの、その他の危険な点について知りたかったが、記事は見つからなかった。でも、たしかに賃貸サイトを見ると、一階は若干安いことが多い。そんな不安を押し流すように、引っ越し当日は、頑張ってトラックから荷物を運んだ。後でドアを叩く人いるので開けたら大家だった。「仕事は見つかった?」と訊くので未だだと緊張しなかがら答えた。

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