第19話

管理会社と正式に契約を交わすことになって、書類に印鑑をついて渡すと、管理会社の人が、あの大家さんどうでした?というので、「どうって何がですか」と言うと、管理会社の男性社員は「以前に学生さんが部屋を借りていたことがあるんですが、いろいろ親切な人らしいですよ」と言った。私は初対面の人は怖いし、そんな風に見えなかったけど、人は見た目によらないのかもしれない。

管理会社「ちょっとおっかない雰囲気はありますけどね、学生さんが風邪で倒れた時はいろいろ世話してくれたり」

私は40代にしては童顔で背も低いので、子どもみたいに見えるのかもしれなかった。

現在の住所が使えなくなるので、例の弁護士に電話すると、別の若い男性が電話に出た。「先生は外出中です」と彼は言った。あの先生の事務所は、こじんまりとした貸しビルの6階だったけれど、もう一人社員がいたことはこれまで知らなかった。「引っ越しが決まったんです」と言って、新しい住所だけ伝えた。

後で弁護士から電話がかかってきた。「一体どうしたの?再就職したの」と訊くので、現在のアパートを倒して建て替えることになり、立ち退きを迫られましたので、管理会社に紹介された別のアパートに行くことになりましたと説明した。

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