第15話

退めさせられた派遣先の会社だが、扱っていたデータの一部が外部へ漏洩し続けていたという事実が判明したらしい。データの一部って何のデータだろうか。私はレジとか金銭管理が苦手で、徹底して機械操作からも逃げていたけど。そういえばそういうことを聞いたことがあったような気がする。はっきりとは知らない。私は派遣先の会社ではなんでも「蚊帳の外」だったので、そんなトラブルの詳細を私に喋る社員はいなかった。会社の人がばたばたと騒いでいたことを頭の片隅に思い出したが、それが自分とどう関係があるのかよくわからない。それで業務に支障が生じて、上にまで通達がいき、社員同士で相談しあったときに、私のことを嫌っていた社員が、私のせいだと主張して、今後もこうした漏洩が続くようでは社の信用に関わるという説明をして退職させた…という回答があったらしい。

弁護士は「本当にそうだったんですか?」と私に訊いたので、私はそういう事実があったような気もするし、無かったような気もするし、正直「よくわかりません」と答えた。弁護士はためいきをついた。なんか悪いことをしているような気になった。

弁護士は、何かニ三質問したが、私ははあはあと訊いているだけで、すりガラスの向こうからぼんやりとした、うつろう影を見ているような感覚が残った。弁護士の先生は悪いひとじゃないんじゃないかと思ったけど、自分の感じかたには自信が持てなかった。

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