第12話
春は近づきつつある。草木にも冬のあいだに溜め込んでいた生命力が漲り、夜が訪れるたびにその生命の吐息を空に向かって吐き出す。そんな季節は、鳥たちにとって一年で最も過酷な季節だった。鳥たちは新しい季節の訪れを感じ取る。次の発情期や繁殖期、そして換羽に向けて、一日ごとに体調のうねるような変化に直面する。日本列島で暮らす鳥たちは、春先に命を落とすことが多い。そう聞いたことがあるが、なぜなのかよく知らない。そういえば、インコの体重をしばらく測っていないことに気づいたが、体重を測ろうとするたびインコたちが大暴れするのでおっくうになり後回しにしていた。今は二羽とも元気そうに見えた。食欲があって元気にさえずっていれば飼い主は満足なのだ。体重を測ろうとするとつかんで小さな箱に入れる必要があるが、どの鳥もつかまれるのを嫌がった。なんだか自分が動物虐待しているような気になった。
私は、生まれてはじめての弁護士との相談内容を頭の中で反芻した。慰謝料の請求をするには証拠が足りないので、私も弁護士も言葉が詰まりがちだった。でも、正直いって法的手段なんか嫌だった。派遣先の会社の人たちに睨まれたりして、あんな怖い目に二度とあいたくなかった。だから席を立つ前に「家に帰ってよく考えます」と言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます