第8話

労働基準監督署から帰宅した夕方、疲れて消耗していて、待ちくたびれていたインコに餌と水をやるのが精いっぱいだった。疲れているのに、なかなか眠れなかった。お金のことを考えると気が重くなったし、弁護士のような人と会って、ちゃんと話せるのか不安だった。後でお金を請求されたらどうしようと思った。


翌週、労働相談へ行く日がやってきた。

電車を乗り継ぐ駅を間違えて、慌てて駅員に訊いて切符を買い直してホームに戻ったり、駅で降りたものの予想していたより歩かなければいけなかったりで、労働基準監督署で指示された場所にたどり着くまで一苦労だった。


建物に入り、見たことが無いほど小さい、古いエレベーターに乗った。エレベーターは私ひとりだった。ゴトゴトと音と振動がして大丈夫かと一瞬不安になった。エレベーターから降りると、左手に灯りのついている部屋があった。


その部屋の前に行くと、ドアは開いていて、こちらに背を向けて恰幅の良い老人がTVを見ていた。


あのー…と声をかけると、その老人が振り返った。

遅れてすみませんと言うと、「ああ、はいはい、相談に来られた人ね、先生来ているからどうぞ」と隣室を指さした。

隣室の前まで行ってドアをノックすると「どうぞ」と声がした。

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