第3話

職場に入って1年もしないうちに、人間関係はギクシャクしてきた。すりガラスの向こうに見える世界が次第にそのぼんやりとした輪郭を崩していった。学校に通っていた頃も、社会人になって働くようになってからも同じ。自分では真面目にやっているつもりでも、自力では変えられない何かによって、人間関係は悪化していった。


職場には正社員の社会人だけではなく、自分より後から入ってきた学生アルバイトもいたが、私は露骨に無視されるようになった。自分が使ったタブレットを手渡したら、タブレットをバイキンみたいに扱われたこともある。更衣室でたまたま隣になった女性に"ゲッ"と言われたことも。


退める前に、身に覚えのないことで複数の人間から叱責された。記憶にないので「わかりません」とか「覚えてません」と答えたら、相手がひどく腹を立てた。


長い時間叱責されているうちに、自分がそういうことをしたような気になってきた。上司から「いまの仕事、本当に楽しい?みんなあなたには元気がないって言ってるよ?いまの仕事続けたい?」と大きな声で言われて、怖くなって泣き出してしまった。泣いたからその場はそれ以上追及されなかったけど、トラブルはすぐに上へ行ったらしい。

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