第2話

昨日は、ひとり暮らしをしているアパートの管理会社から電話があった。


どきりとした。担当の男性の声で、賃貸契約について相談したいことがあるから近日中に時間がとれないかと言う。日時を決めて電話が切れた。


いささか一方的な電話だった。家賃は滞納していないし、何の話か見当がつかない。受話器を置いた後で胸騒ぎがした。でもすぐ忘れてしまった。


前職は、大きな量販店でのアパレル売り場にいた。


派遣じゃ生活できないので、正社員になりたかったが、職場では契約社員扱いだった。派遣と正社員の中間的な待遇。


同じ職場の正社員たちからは浮いた存在だった。休憩時間も、だれも私に話しかけてこなかった。業務連絡以外で口をきくことはなかった。だから寂しいな、不便だなと感じてはいたけど、頑張って正社員になれれば、何かが変わるかもしれないと思った。


売り子ではなく、ピッキングや雑用の裏方だったが、どんだけ頑張っても、仕事ができる人になれなかった。とにかく気がきかないし、金銭処理はさっぱりだった。何度かレジを任されたが、金銭の計算がさっぱりなので、すぐに降ろされて、倉庫を売り場を行き来する仕事に戻った。私としては、不特定多数の客への接客がなく、ひとりもくもくと作業する方が楽だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る