第11話 世界の終わりとか大袈裟だろ!

 屑共を駆逐した後、従魔も入れる飯屋にきたのだが...


『へいへいへーい、九天のお嬢ちゃん。このパーティーでは俺様が先輩だから、俺様の事はアルテマ先輩って呼べよ?OK?』


「さっきから何さね!この偉そうなセンシズウェポンは!カガミがいなかったらガラクタさね!」


『ガ、ガラクタだとぉぉぉぉっ!?俺様は伝説のアルティメイトウェポンだぞ!』


「ぷっ、ぷぷ。アルティメイトウェポン?アンタみたいな下品な黒棒がアルティメイトウェポンな筈が無いさね。」


 先輩風を吹かしたいアルテマだが、煽り耐性が低いようだ。


 分かるぞクエラ。アルテマはクラスに居たら間違いなく女子に「下着の色は?」とか聞く下品なヤツだ。


 マトモに対応するだけ損だ。


『や、夜王の兄貴!なんか言ってやって下さい!』


 コイツは何故かクイミーには下っ端ムーブをかます。


 そしてクイミーに対しての謎のキラーパス。


「バク~(焼きトウモロコシ美味しい~)」


『流石は夜王の兄貴っす、俺様みたいな有象無象の言葉は届かないのか...』 


 多分、トウモロコシに夢中なだけだぞ。


 俺からすれば夜王なんて厳ついものにはどう頑張ったって見えない。


「夜王って、本当にあの真なる夜の王さね!?いや、でも、この風格、この深淵を感じさせる瞳、紛れも無い夜王さね。」


 え?クエラ、お前もなの?


 風格も感じないし、ましてや俺にはつぶらな瞳にしか見えないんだけど。


「ピ、ピュイ(クイミーは真なる夜をもたらす王、有象無象の魔物は頭を垂れる)」


 スフィ、お前までそんな事を言うか。ここまでくるとドッキリを掛けられてる気分だ。

 

「なぁ、お前達。夜王だの、後はアルティメイトウェポンだっけ?俺にも分かる様に話してくれ。」


『ハァ、カガ坊。お前そんな事も知らないで俺様達のマスターやってたのか?』


 このヒャッハー棒に溜息をつかれると無性に腹が立つのは俺だけか?


「フフン、何も知らないカガミに、このクエラお姉様が教えてあげるさね!」


 ここぞとばかりにマウントを取ってくる駄狐の幼女。


 何故かコイツからは教わりたくないが仕方ない。


 マスターとして眷属の事は把握しておかなければならないからな。

 

「いいから教えろ。マスターとして、お前らの事を把握する必要があるんだ。大体、お前らもイヤだろ?自分達のマスターが自分達の事を良く知らないって。まずはアルテマからな」


『じゃぁ改めて自己紹介するぜ!俺様はアルティメイトウェポンのアルテマ様だぁ!ナイスバディで甘やかしてくれるお姉さがタイプだ!それから...』


 非常に長いので要約するとこうだ。


 アルテマは元は霊魂魔法で作られた神格兵器アルティメイトウェポンで、大昔に黒錆びの呪いを受けて力を無くして、黒錆びの棒になり果てた。


 辛うじで意識だけを何百年も繋いでいたが、意識が途絶える寸前に俺に出会って、どうにか識格武器センシズウェポンになれるだけの力を取り戻した。


 因みに神格兵器アルティメイトウェポンっては神様の喉元に届き得るらしく、武器を食えるのは元が神格兵器だからって事らしい。


 俺はこの説明を全て真に受けたりはしない、アルテマの事だからどこかしら盛ってる可能性があるからな。


「アルテマは神格兵器アルティメイトウェポンを目指して頑張ろうな。次は...」

 

「はいはーい、次は私さね!私はかの名高き大妖魔にして九天白尾皇さね!大昔に痴れ者共が...」


 こっちも要約するとこうだ。


 クエラは大昔に東の島国に住んで居たが、ある時に国に大災害がおきてしまい、大災害の元凶扱いされたらしい。


 その国の偉大な大陰陽師を筆頭に討伐隊を組まれて、激戦の末にどうにかこの大陸に逃れたが、その大陰陽師がしつこく、単身でクエラを追ってきてたとの事。


 油断してた所を五行星封印され、幾百年の眠りについてしまったらしい。


 九尾のクセに尻尾が現状3本しかないのは、俺が無茶苦茶な封印解除をしたから力を取り戻せなかったからだと文句を垂れている。


 いや、言っとくが力を取り戻せてたら、クエストが発生してプレイヤーに討伐されていたに違い無いので、逆に感謝して欲しいね、まったく。


 因みに妖魔扱いされてるのは妖術が扱えるかららしく、本人も大妖魔って響きを気に入っていて満足している。


 俺思ったんだけどさ、クエラは妖魔ではなく幻獣種だ。


 クエラが妖魔って事を否定しないから大災害の元凶にされたんじゃないのか?まぁ、もう大昔の事だから良いけどさ。


「で、クエラもアルテマも夜王って生き物について何を知っている?そこの所詳しく。」


『あれは遥か大昔の事だ。俺様がまだ神格兵器だった頃に俺様の持ち主が当時の夜王の親分と殺り合ってな。まぁ結局、俺様の持ち主は永眠させられて負けたけどなぁっ!』


「ほほぉ、神格兵器使いでも勝てないって事は夜王ってやっぱりヤバイさね。私もこの大陸に逃れた時に間違って夜王の縄張りに入ってコテンパンにされたさね。まぁ事情を話したら謝ってくれたさね。」


 待て待て、話しが本当なら神格兵器使いと九尾があっけなくヤラれるって相当じゃないか!


「な、なぁ、九尾と神格兵器使いがコテンパンにされるって滅茶苦茶ヤバイ存在って事にならないか、それ?」


「何言ってるさね!ヤバイも何も夜王は基本温厚だから良いけど、その気になれば真なる夜をもたらして星そのものを眠らせる事だって出来る神話の存在さね!そもそも眷属になってる事自体おかしいさね!」


『そうだぜカガ坊。マスターのカガ坊が夜王の兄貴の育て方を間違ったら俺様達はお陀仏だぜいっ!ヒャッハァァッ!』


 カルコスゥゥゥゥゥ!あの老害はバカなの?アホなの?死ぬの?

 

 何であの老害はそんなヤバイ存在の卵なんか持ってたんだよ!


 星そのものを眠らせるって何!?それってこのゲームのバッドエンドだよな? 


 魔物一匹の力でゲームが終わっらシャレにならないぞ!ESOの運命が俺の手に...


 結論を言お、ESOがサ終したら全部カルコスが悪い。


「ピュ?ピュイ?(マスター大丈夫?顔色が悪いよ?)」


「スフィ、お前だけが俺の心を癒してくれる存在だ。」


 スフィを撫でてるとクエラが訝しげに聞いてくる。


「ヤバイで言えば、スフィも結構ヤバイさね。スライムの常識の埒外さね。魔法を使うスライムなんた見たこと無いさね。」


 暗黒系統のモンスターになったんだから普通じゃないのが普通だろ?

 

「いや、まぁ、俺が力を与えたんだから、これが普通じゃない?」


「う、そう言われると力を貰った私は何も言えないさね。あ!次はカガミの事を言うさね!」 


「俺か?異界の紡ぎ人で職業はテイマーだ。種族は闇人で暗黒面の使い手だ。以上だ。」


 なんかアルテマやクエラに比べたら俺って大したストーリーが無いな。


 ちょっと悲しい。

 

 それと絶対に適性職業がニートって事は言わない。


 コイツらの事だから揶揄ってくるに違いない。


「最初に聞いて冗談かと思ったんだけど、カガミは本当に闇の走狗さね?でも、異界の存在ってのが一番の驚きさね!」


『おいおいおーい!カガ坊は異界の存在だったのか!通りで闇の走狗のクセに割と優しいと思ったぜ。』


 クエラとアルテマの話を聞く限り、闇人は野蛮人なんだろうな。


 まぁそれは否定しないけどな。


 てか、プレイヤーってそんな驚く存在か?


「そうだ。異界の存在だからちょいちょい居なくなるけど、あんまり気にするなよ。」


「バクッ!(マスター焼きとうもろこしおかわり!)」


「お、おう!クイミーいっぱい食って良いぞ。今日は大活躍だったからな。ハハハ」


 さっきの夜王の話を聞いて、つい下手に出てしまった。


 これは良くない、このパーティーのリーダーは俺だ。


 リーダーとしての威厳を保たなきゃな。


「バク、バッ(マスター大好き、へへへ)」


 こんな可愛いバクが本当に恐ろしい夜王なのか?


 ハァ、さっきの話は忘れよう。

 

 夜王になったら、そん時考えよう。


 今は楽しく眷属達と飲み食いをしよう。


 

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