第10話 弱い者いじめとか趣味じゃないんだよね~

【プレイヤー・キタクワから1VS1のデュエルを申し込まれました。受諾しますか?】


 目の前に3度目のPvPの申し込み表示が現れる。


 なぜこんな事になってるかと言うと、岩石地帯から始まりの町に帰ってから広場で飯を食べてたら色んな奴らに絡まれたのだ。


 やれスフィの情報を教えろだの、やれクイミーの情報を教えろだの、やれクエラを肩車させろだの、色々言われたので煽ってやったのだ。


 あれれ~?皆さん情報が無いと強くなれないの~?MMORPG向いて無いんじゃないですか?ってな。


 この煽りで見事に10人の馬鹿が釣れたのだ。


「おい、雑魚共。もう面倒だから、一人一人じゃなくて8人で掛かってこいよ。弱い者イジメとか趣味じゃないから、ハンデやるよ。」


「この野郎!ちょっと強いモンスを手に入れたからって!」


「今にその情報を吐かせてやるよ!」


「情報の独占とか自分勝手だろ!」


 うわー本当に、こんな見本みたいな負けフラグを立てる奴らっているんだな。


「ねぇねぇ、お前らは8人で、しかも勝ったら情報が手に入る。俺メリットないからさ、こうしようぜ?お互い痛覚設定100%、どう?俺はスリルが欲しいんだよね。」


 我ながら邪悪な笑みを浮かべてると思う。

 

 暗黒面に墜ちた時からマトモなプレイなんて出来るとは思っていない。

 

 ならば、暗黒面らしく邪悪にプレイしてやる。


「コイツ、正気かよ...」


「流石にそれは...」


「うわー自分達は情報が欲しいから強引にデュエルしろとか言っといて、自分達が嫌な条件を出されたら無理ですは流石にないわ~雑魚ムーブここに極まれりだな!」


「いいぜ、やってやるよ!後で謝ってもやめねぇからな!」


 リーダーっぽい金髪が吠えだした。

 

 あぁ、コイツはダメだな。

 

 リーダーの器じゃない。彼我の力量を測れないとは笑いを通り越して、憐れだ。


【プレイヤー・ゴルバから8VS1のデュエルを申し込まれました。受諾しますか?】

 

 俺は【YES】を押して、お互いの痛覚設定100%の確認をする。

 

 因みにテイマーの場合は自分のパーティー登録している眷属達は強制参加だ。

 

 アルテマを含めたら、実質5対8だ。正直ヌルゲーなんだよ。


【READY FIGHT!】


 開始の合図が鳴り、バカ共が向かってくる。

 

 さっきまでの二戦はスフィとクイミーの合わせ技で倒したが今回は俺の力を使うか。


「なんだ、これは!や、やめろぉぉ」


「うわぁぁ、くぅ、るしぃ」


「いやぁぁぁぁ!何なのよ!この黒いのは!」


 杖Verのアルテマを持った場合の黒靄は相手を起点に発生する。


 黒靄が各相手プレイヤーを捕獲し、空中へと持ち上げる。


 コイツら弱すぎだろ、最前線プレイヤーになってから出直してこいよ、マジで。


 段々飽きてきたので、絞首の手振りでリーダーと女プレイヤー以外の奴らを絞め殺していく


「やめろぉぉぉぉぉ!」


「くるしぃぃぃ、くるぃぃ!」


「痛いぃぃぃ、痛いよぉ許し、てぇぇ!」


 聞こえてくるのは、憐れな奴らの阿鼻叫喚の協奏曲。

 

 これがトラウマになってもう二度とログインして来ない事を祈る。

 

「リーダーと右端の女、お前らだけは楽にキルして貰えると思うなよ。」


「俺らの負けでいぃぃ!降参だぁぁ!」


 このバカは何を言ってるんだ?自分でHP全損バトルを選んだ癖に降参なんかシステム的に出来る訳ないだろ。


「リーダーさんよ。お前は見せしめとストレス解消の為に惨くキルする。そこの女は、俺が女性に甘く無いと知らしめるため惨くキルする。て事で女の方からいくか」


「お願いやめてよぉぉ!私達が悪かったからぁぁ!痛いのは、痛いのはいやぁぁぁぁ」


 黒靄に包まれながら暴れようとする女。その女の手元から零れ落ちる短剣。


「アルテマ。飯をやるよ、あの短剣を食らえ。」


『ヒャッハァァァッ!頂きまぁぁぁすぅ!』


 杖から口を模したモノが短剣へと伸び、飲み込む。

 

 これでアルテマも念願の剣になれるから当分は静かにしてくれるかな?


 アルテマに短剣へと変化して貰い。女へと近づく。


「この黒い短剣、カッコイイぞアルテマ。」


 アルテマを褒めると「生まれながらのイケメンだからな!」なんて、良く分からない事を言ってるので無視する。

 

 こんな奴でもたまには褒めてあげないとモチベーションに関わるからな。


 そして、俺は躊躇いなく短剣で女の眼球を一刺する。


「いたぁぁぁいっ!もうやめてぇぇっ!」


 短剣を眼球に刺されただけで大袈裟な女だな。そもそも痛覚100%とは言え、それはこのゲーム内での話しだ。

 

 現実での痛みと比較したら50%程度だ。

 

 てか、血は流れないのか。刺した眼の部分からは光る大粒の粒子が流れるだけだ。

 

 もう少し実験をする必要があるな。

 

 それからは、爪とか細かい部分を剥げるかの検証、舌を切れるかの検証、脳が見れるかの検証をしてみたが、どれも微妙な結果に終わった。

 

 特に女のHPが0にならない様にポーションをかけてやった時の顔は傑作だったぜ。


「もう、ヤダ...ママ..助けてよ...もうゲーム...やめるから...」


 この通り、心を折る事に成功した。

 

 これで今後、因縁を付けてくる奴が一人減ったな。


「もういいよお前。現実に帰れよ。」


 検証にも飽きたので最後の検証を試す。女を黒靄で空中に持ち上げ、人間逆パカを試みる。

 

 人間を折り畳み携帯のように背中から折れるか見てみたかったんだよね。


「あぁぁぁぁぁぎゃぁぁぁぁ...あっ...」


 黒靄で圧力を加えていき、ポキッと折ったのと同時に女が光のポリゴンとなって消滅する。

 

 これで残るのはリーダーと思われる男一人だ。


「いくら喧嘩を売られたとは言え、ヤリすぎだろ...」


「おいおい、見てらねぇぜ...」


「ヤバイ吐きそう、うっ」


「人間逆パカwwww」


「人の心はねぇのかよ!外道が!」


「あの人怖いよ...」


「あの黒いのは闇魔法...じゃないよな!?」


 ギャラリーから聞こえてくるのは非難の声。

 

 脳内お花畑なヤツら多すぎだろ。

 

 この世界は日本と違って法律なんて無いに等しいんだから、こう言う事は想定しておくべきだ。

 

 大体、人体検証してやったんだから感謝しろよ、マジで。


「カガミは容赦がないさね、ここまでする必要があるさね?」


「お前を肩車させろとかぬかした屑共だぞ。容赦する訳無いだろ。」


「私の為に、カガミ...」


 何故か頬をほんのり紅く染て、俺から目線を逸らすクエラ。

 

 いや、勝手に好感度上がるのはいいけど、最終的な思いには多分答えられないぞ。


『ヒャッハァァァッ!俺と同じでカガ坊も隅に置けないなっ!』


「ピュイ(スフィもマスターが大好きだよ)」


「バクッ(マスターはトウモロコシ買ってくれるから好き。)」


 アルテマ。ヒャッハーなお前が女性にモテルとは思わないぞ。

 

 うん、スフィには晩ご飯をいつもより多くあげよう。 

 

 それとクイミー、お前が好きなのはトウモロコシだ!


「お前達の気持ちはよーく分かったよ。とりあえず最後の屑を始末するぞ。」


 俺は金髪プレイヤーに近づいていく。


「頼む!俺の負けでいいですっ!許してくださいぃ!」


 短剣を無様に喚き散す屑野郎の目元に添えて囁く。


「今からお前のいたる所を刺す。刺す度にポーションで回復してやるよ。それで、キルした後は何回も何回も、粘着してやるから覚悟しろよ屑。」


 まぁ、粘着したらGM案件だから、やらないけどね


「い、イヤだぁぁぁぁぁぁぁっ!あんなキルはイヤだぁぁぁぁぁぁっ!痛いのはイヤだ、イヤだイヤだイヤだぁぁぁぁぁっ!」


 そして眼球を刺そうとした瞬間だった。


《対戦相手の精神状況に異常を感知しました。プレイヤー・ゴルバ強制ログアウト。》


《You Win 対戦相手8人の所持金額の二割を獲得しました。おめでとうございます。》


 セーフティーシステムが発動して屑がログアウトしたようだ。

 

 このまま人生からもログアウトして欲しいものだ。

 

 よしよし、また所持金額が増えたぜ。中々に好条件なデュエルだったぜ。

 

 デュエルが終わり、周りに張ってあった障壁が取り除かれて、野次馬共が啞然とてる。

 

 中にはキルされたヤツらの仲間なのか、文句を言いたそうな奴までいる。


「おい、ガヤ共。俺はこのゲーム、ESOの掲げる『あなただけの物語を』を体現しようとする者は素直に尊敬する。だが、情報をよこせだの、赤の他人の俺に力を貸せだの言う奴は軽蔑する。そんな俺が気に食わないヤツは、今ここでヂュエルを挑んで来いよ、屑共みたく惨くキルしてやるからよ!」


 それだけ言うと、ガヤ共はさっきのヂュエルを思い出したのか顔を青くして散っていく。

 

 にしても結構ヤラかしたな。これで多くのプレイヤーに恨まれたのは間違いない。

 

 まぁ、元からソロだからどうでもいいけどね。

 

「とりあえず、腹減った。お前達いくぞ。」

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