第8話 夜王って何だよ!
「バクゥ?(ココは?)」
「ば、バク?確かそうだよな?」
卵から産まれたのは、子犬程で黒くてつぶらな瞳なバクであった。
コイツが本当に真なる夜を支配した魔物なのか?
ただの可愛いバクにしか見えん。いや、でも待てよ。幻想生物に獏っていたよな?確か夢を食べる幻獣だった気がする。
「バクバ~ク♪(マスタースキー♪)」
色々考えてたら俺の足に体をスリスリしてるバクがいた。
可愛いじゃねぇか、このモフモフ具合もたまらないぜ。
「先ずは名前だな、お前の名前はクイミーな。」
「バク!(僕の名前ハクイミー!)」
名前:クイミー Lv1
種族:
HP:100/100 MP100/100
腕力:30 耐久:30 敏捷:25
器用:30 精神:30 知識:30
スキル
鑑定してみたが、成程...こんな愛くるしい生き物が暗黒系ってのは驚きだが、やっぱり睡眠系のスキルを所持してたようだ。
また、連携テストの確認から始めてみよ。てか、何でLv1でスフィの能力値とほぼタメ張ってるんだ!やっぱり夜の支配者だからか?
取り敢えず従魔の能力値については後で掲示板を確認して調査するとしよ。
『お、おぉぉぉぉ!これこそ夜王の風格ってやつだぜ!』
また、アルテマが訳分からない事をほざいてる。
夜王の風格?俺には愛らしい動物にしか見えない。
「ピュ!(僕ハスフィ。よろしくネクイミー!)」
『夜王の兄貴!ヨロシクお願いしやっす!』
「バク!(スフィモアルテマモよろしく!)」
何故か下っ端ムーブをかますアルテマ。
まぁ三匹とも仲良くしてくれそうで良かったわ。
「よし、お前達。クイミーを入れたパーティー連携を試すぞ。」
「『おぉー!』」
元気の良い返事を聞き狩を再開する。
「ガルゥルゥ」
「クイミー。お前の力を見せてくれ」
狩を再開したらまたハイエナ魔獣2匹にエンカウント。
にしてもこのハイエナやたら多いな。
ファンタジー定番雑魚のゴブリンにそろそろ会いたいもんだ。
「バク!バァァク(イクヨ!眠っチャエ)」
「ガ...ル...zzzz」
「.....は?」
いやいやいや、オカシイだろ。こんなで良いのかよESO!
始まりの町周辺はヌルゲーになった疑惑あるぞ。
因みに寝たきりになったハイエナはスフィに取り込まれて【消化】して貰った。
「ピュイ!(クイミー凄い!)」
『流石は夜王の兄貴っす!』
「バク!(エヘヘ皆寝たイ時ハ僕に言ってネ!)」
クイミーに頼んだら永眠になりそうな気がするんだが.....
てか、あんな睡眠能力を見せつけられるとマジもんの夜王なのを認識させられる。
ギャップ有り過ぎだ。
そもそもクイミーは暗黒面のイベント以外で手に入るのか?また情報屋に絡まれても面倒だな。
「うん?あれは...まぁいいや、お前ら、再開するぞ。」
視界にボロイ祠が入ったが、俺が気にするって事はもう他の奴が既に調べ尽くした筈だ。
それから日が沈むギリギリまで色んな連携を試しながら敵を狩った。Lvも皆上がり戦闘経験を積めた。
結論としては前衛をクイミーとスフィにして俺は後方から杖Verのアルテマを使って支援するのが一番良かった。
それと意外だったのがスフィとクイミーの【闇魔法】だ。
【暗黒接続】で強化された【闇魔法】の殲滅力がかなり凄かったせいで、もはや戦闘ではなく蹂躙だった。
森での戦闘を終えて、黄昏に包まれる始まりの町に帰還し、宿を目指して歩いてるのだが.....
「あのモンスター可愛い」
「どこでテイム出来るんだろ?」
「お前聞いてこいよ」
「イヤよ。人相悪いし、話し掛けるなオーラが出てるもん。」
やたら視線を感じる。まぁ理由は分かるし、クイミーが珍しいんだろうな。取り敢えず何かを聞かれても無視だ。
「バク!(マスターコレ食べたい!)」
「へぇー、クイミーはトウモロコシが好きなのか」
スライムがトウモロコシを好むのかは分からないが、スフィとクイミーの合わせてトウモロコシを6つ買って近くの広場のベンチに腰掛ける。
「串焼きも段々飽きてきたな...」
暗黒面のクエストが終わってから串焼きばっかりでいい加減飽きてきた。
プレイヤーショップに行くか?でもな、プレイヤーショップってのは大体仲間内の溜まり場になってるのが相場だ。
そんな溜まり場に行けば「これからもウチらの店よろしく」とか言われて絡まれる可能性が高い。
うん、凄く面倒だな。やめとこ。
『カガ坊!俺様の飯はどうした!?』
こんな人目のある所で出来ればアルテマと話したくない。
「アルテマ。昼に武器を二つも食べただろ?」
それからは刀が食いたいだの、魔剣をよこせだの、どう見ても序盤の始まりの町で手に入らない武器ばっかり強請ってきたので無視して宿屋に帰宅して、ログアウト。
◆
家で昼食と転売用のカードゲームを買い終わらせて再度ログイン。
ゲーム内は朝の5時頃で再ログインしてから予定も無いので何をするか悩む。
因みにログアウト中は従魔達も消えてるらしい。
マイホームがあればマイホームでゆったり待機するらしい。
にしても何をするか...戦闘訓練?いや、昨日でもう充分試したし、もう始まりの町周辺ぐらいなら自衛ぐらい出来るであろう。
当初の目的であった生産活動をするか?昨日戦闘の合間合間で採取したし、調合してみるか?
いや、待てよ昨日フィールドで見つけた祠を調べてみよ。
何故か今になって凄く気になる。うん、調べよ!
森に移動し、祠があった場所に行く。
「森に祠っていかにもって感じなんだよな...」
祠に木漏れ日がいいアクセントになっていてより一層幻想的に見える。
この幻想的な風景が見れるだけでESOに来て良かったと思う。
カメラシステムで写真撮っておこう。
「スフィ、クイミー、アルテマ。なんか見つけたら知らせくれ。」
「「ハーイ!」」
『zzzz』
朝から元気の良い返事だ。やっぱりプレイヤーとゲームするより、モンスター達と旅する方が楽しいな。
てか、静かだと思ったらアルテマのヤツは爆睡していやがった。
当分コイツに武器をあげるのは禁止だな!
スフィやクイミー達と祠をベタベタ触りながら、或いは色んな所を押しながら調べてみたが何も起きない。
やっぱりただのオブジェクトなのか?いや、俺のゲーマー経験に基づくと祠はイベントトリガーってのがセオリーだ。
ここは発想を変えよう。イベントを起こすには調査以外だと何がある?
そうだ!破壊だ!祠を破壊しよう!イベントトリガーの基本は【破壊】【必要アイテムの獲得】【必要なスキルの獲得】【必要NPCとの交流】の4つのどれかが基本だ。
破壊出来なかったら、祠に必要なアイテムかスキルかNPCがいるって事になる。
そん時はまた調査すればいい。
罰当り?日本人の心?そんなモノは一切気にしないし、心は一ミリも痛まないからな。
「スフィ、クイミー!全力で祠にダークボールで攻撃しろ!」
「ピュイ!」
「バク!」
二匹は暗黒接続で強化された全力の闇魔法の初級技、ダークボールを祠に叩きつけて土埃が舞う。
「本当に破壊できたのかよ...」
土埃が収まると祠が木端微塵になっていた。
正直本当に破壊出来ると思わなかった。破壊不能オブジェクトかと思ってたぜ。
「バク....(何も起きないよ...)」
「ピュ...(意味あったの...)」
そう、数分待ったが何も起きないのだ。このままだとマスターとしての威厳が!
いや、これは意味のある仕事だ。決して部下に無駄な仕事をさせた訳では無い。
「お前ら落ち込むな。それより心当たりあるから付いて来い。」
結局、祠を破壊しただけで何も起きなかったが、俺にはまだ手が残っている。
図書館でNPCの司書さんに聞けば何かしら分かるだろう。
図書館を目指す事数十分、図書館に着いたので館内ルールに従ってスフィとクイミーを外に待たせて俺は図書館に入る。
「森にある祠ですか?うーん、確か昔は神聖な場所として崇められていと記述にあった気がしますね。」
「そ、そうですか...」
その神聖な場所を木端微塵にしちゃいました...てへぺろ。
司書さんが「少々お待ちください」と言って、何やら本を持ち出して来た。
「この本によりますと、この町の外にある祠は九つある祠の一つで、他の祠は他の町付近にあるみたいですね。後は...九つの祠はこの町の外の南にある岩石地帯にある石と関係があるみたいですね。」
九つも!?てか石って如何にもヤバイのがいる可能性が高いな。
気に食わないのは他の町って最前線組がエリア解放するまで待たなきゃイケない事になる。
ここに来て他人頼みになるなんて...
えぇい面倒だ!祠なんて無視だ!このまま岩石地帯向かって石を破壊する。
「分かりました。調べて頂きありがとうございます。失礼しますね。」
俺はそれだけ言うと図書館を出て、二匹を回収して始まりの町の外、南の岩石地帯へと向かう。
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